SAKE

美味しくお酒を飲む・・・

美味しいお酒を飲む・・美味しくお酒を飲む・・・

どちらも美味しいことには変わりはなくともに素敵な時間ですが、ニュアンスが微妙に違うと思います。お酒を楽しんで飲む。気の置けない友達と、好きな人と・・・せっかく美味しい酒を飲むのですから、料理というか、「アテ」にも拘りたいものです。料理をおいしくいただくために酒を飲むのではなく、酒の味わいを邪魔しないように、もっと言えば酒をより一層美味しく飲めるように料理を考える。

 シンプルに蒸しただけの野菜、鮮度抜群の刺身、舌に張り付くような生タコ・・・素晴らしい日本酒とともに、素晴らしく日本酒に合う料理が日本にはありますね。

 以前、懇意にしている蔵元さんにお邪魔した時、その年に絞った出来立ての新酒のアテとして「タカベの塩焼き」を供されたことがあります。その絶妙な取り合わせ・・唸るほど、感動しました。


おしながき

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またしても~東洋美人です

友達が日本酒バーを始めました。

オープンの日には呼ばれてご馳走になりました。

そこで飲んだ酒はどれもすごい出来で、日本酒ファンがうなるほどの美味しさなのですが、なかでも驚くほどの味わいなのが、またしても東洋美人です。

以前、紹介した東洋美人は「純米吟醸・愛山」という規格。そして今回俺を仰天させたのは「本生・槽垂れ」(ほんなま・ふなだれ)という規格です。

ごくごく普通に造る酒は出荷までに2回、火入れをしますね。タンクに詰める時に1回、そして瓶に詰める時にもう1回。本生と言うことは、この2回の火入れを一切しないわけです。当然、酵母菌が生きたまま瓶に入り、味が変化していきます。

また、槽垂れということは、槽(ふね)という、いわば酒を絞る装置があるのですが、普通はモロミの入った布袋を槽に積んで酒を絞ります。槽垂れは、圧力を架けなくても自重で滴り落ちてくる部分のことですね。勢いよく迸る出来立ての奔流は、布袋に濾過されることのない勢いで出てくるので、はっきりと見える白濁があります。まさに「生まれたばかりの酒」です。子供は生まれると、教えられることもなく泣きます。それと同じように酒は生まれた時、教えられることもなく迸ります。

東洋美人のこのテの酒、フレッシュな果物のような吟醸香と、酵母が生きていることがわかる発酵の含み・・・「いやいや~すごいね」と声をあげました。女性にも受けると思います。

店主がたいそうイケメンなのでこういう酒を常時扱えば固定客がついて来てくれるでしょう。

久々に感動した酒です。 飲める店は

東京都北区赤羽南1-5-7
クレアシオン赤羽ビル3F
日本酒バー ribbit ribbit・・リビリビ
TEL 03-5939-6980


田酒~山田穂を味わう

田酒・・・この酒の特別純米酒は、日本酒に興味を持ち始めた時期に誰でも通る、酒好きになるための、いわば「通過儀礼」のような酒ですね。

蔵元である西田酒造店は青森県を代表する酒蔵で、県内、東北にとどまることなく、その銘醸造家としての名声は全国に轟いております。

もともとは「喜久泉」という酒を造っていたのですが、昭和49年に、「田酒」を世に出し、以来、この蔵元の純米酒にこの名前を使っております。

青森県の好適米である「華吹雪」を使うことが多かったのですが、この華吹雪と山田錦を掛け合わせ、今や青森県の酒米の代表格にまで育った「華想い」や、さらには、いったんは消えた青森県の酒米「古城錦」を復活させて酒を造るなど、名前が示す通り、田の恩恵=米 に特化した純米酒を造っております。

友達に誘われ、飲みに出かけ、田酒の純米吟醸・山田穂をいただきました。

山田穂というのは、山田錦の親にあたる酒米ですね。山田穂の、心白がやや小さい、背が高くなるゆえ倒れやすい、などの部分を改良したのが山田錦となるわけです。

一緒に飲んだ友達は日本酒が好きな「飲み応え」のある奴なんですが、田酒の純米吟醸をチョイスあたりが心憎い点を突いてきますね。なかなかの酒ツウです。

甘さ、といっても菓子のようなものではなく、熟した柿のようなふわっとした甘みが漂い、芳香が押してきて、舌触りはつるんとした酒質で、居酒屋定番の刺盛や野菜と牛肉の炒め物との相性も良かったです。

山田穂使用の酒を、久しぶりに飲んで、懐かしい気がしました。と同時に、友達が田酒のこのテを「田酒の上の方」と表現する言い方に、「こやつ、なかなか凝った言い方をしおって、さすがじゃのぉ」と感じました。




「鷹勇」という酒~懐かしい気がした酔い心地

先だって、山陰に旅して、招いてくださった人に会席料理に案内され、「鷹勇」という酒を、すごく久しぶりに楽しみました。俺にとって、とても懐かしい気がします。

「懐かしい酒」なんて表現すると、まるで製造を中止していて、復活したように聞こえてしまいますね。そうではなく、脈々と造り続けられてきたのですが、俺的に「飲むのは久しぶり」という意味です。

駆け出しの日本酒ソムリエだった頃、よく飲んでおりました。

「なんて美味しい酒だろう」と感銘を受けたものです。

職場でも特別純米と純米吟醸「なかだれ」の2種類を常時扱っていました。「玉栄」という好適米を使って醸す酒はシャープな酒質という表現がしっくりくる一献で、刺身や炊き合わせと相性がいい、通好みの酒です。

当時、杜氏だった出雲流・坂本俊さんは、産業省(だったと思う)が選定する「現代の名工」に、日本酒醸造界から初めて選ばれた銘醸造家です。

現代の名工なんて、漆器作家や宮大工じゃないと、選ばれないと思っていた俺は、坂本杜氏が受賞した時、日本酒や蔵元の地位が正当に評価されたようで、小躍りして喜びました。

常時、店で扱っていたようなクラスは普通に手に入るのですが、鷹勇のハイグレードな酒となると、横須賀市の「掛田商店」の店主にお世話になっておりました。この店主、鷹勇のシャープな飲み口を愛し、「海にとける陽」というPBまで造らせたほどの愛好家です。

この店主を介し、坂本杜氏に東京でお会いしたことがあります。握手してもらった時、「ああ、この手が、あのすごい酒を造るんだ」と感動したものです。まるで、ギター小僧が来日中の有名ミュージシャンに握手してもらうようなものです。

時は流れて、坂本杜氏も、惜しまれつつ、一線を退きました。

が、その酒造技術は、弟子たちにしっかりと受け継がれていることが、久しぶりに、しかも鷹勇の地元、鳥取県を旅して飲んでわかりました。相変わらずシャープで、地元の浜で上がった鮮度抜群な魚介とベストマッチです。

こんな「飲み切りサイズ」の瓶、地元の料理屋では普通に扱っているんですね。このサイズ、俺の知る限り、東京では見たことないです。


「五郎八」という酒~そのインパクトが好き

「五郎八」と書いて、「ごろはち」という酒があります。新潟・新発田の「菊水」という蔵元から出ています。

ドブロク、濁り酒という容貌が画像からお判り頂けると思いますが、厳密なことを言えば、日本酒という規格じゃなく「リキュール」に分類されます。でも、俺を含め、全員が日本酒として飲んでますけどね。

秋の終わりから冬にかけて出てくる酒で、この酒を嗜むと「ああ、もうすぐ冬が来るんだなぁ」と思います。

どっしりとしたアルコールの強さ、度数が高いゆえ、したたかに酔う感覚、濾してないモロミが出す酸味・・・大好きな酒です。

会社の同僚にこの酒の話をしたら、興味を示し、早々に飲みに行ったそうです。「話してた通り、美味しい酒だった、強いからすぐに酔うね」なんて言っておりました。

俺にも買ってきてくれました。頂いた日は金曜日で、酒を飲まない日なんですが、「五郎八が手に入ったとあっちゃ・・・」という気持ちになり、会社の帰りに松前漬けを買い、酒が冷蔵庫で冷えるのを待ち、久しぶりに金曜日に一献やりました。

「アルコール重厚感」とでも言えばお判り頂けるでしょうか・・・松前漬けとの相性も良く、酔って一週間の疲れがとれました。



後日譚

「菊水」のアンテナショップが秋葉原にあるのですが、会社の同僚が4合瓶を買ってきてくれました。先日飲んだ2合瓶の倍のサイズで、飲みごたえがあります。

朝早く起きて、掃除、洗濯など、家事を済ませ、ジムに行きカラダを鍛え、仕事関係の勉強も少しだけして、癒す感じで飲みました。

今回のアテは松前漬けじゃなく、「マグロ納豆」にしました。

俺と同じく五郎八を「旨い」と評価している同僚は、麻婆豆腐をアテに飲んだそうですが、強くてガツンと来る酒なので、そういうアテもありだと思います。

「モツの煮込み」や「おでん」も五郎八と相性がいいと思います。

峻烈な酔い心地は疲れを一掃してくれます。





↑ 鶏のネギ塩焼きとチーズと合わせて飲んでみましたが、goodでした。ワインと同じで、日本酒も醸造酒なんで、チーズ、合いますね。発酵食品同士ですし。


風の森~独特の「ホロホロ感」

日本酒の味について説明するのって、とても難しいと思います。

知識のある者同士なら、例えば、搾り方とか、アミノ酸度とか、使っている米の特有の味わいなんかで、「こういう味」って理解し合えるのですが、いきなり知識のない人に「バランスのいい酒をくれ」とか、「鯛の刺身に合う酒をくれ」なんて言われると、「どうしてこの酒が、お客様のリクエストに合っているか」を説明し、理解いただくのって、つくづく難しいと思います。

「はんなり」「馥郁」「キレがいい」など、酒の味を表現する言葉はありますが、俺は現場で働いている時、「ホロホロ感」という表現をしていました。なんと言ったらいいのでしょうか・・・感動するドラマを見た時に、「ウルウル来る」なんて言う、あの感覚に似ています。

喉に落ちて行く時に、独特の感動があり「あ~あ、こんな酒があるんだ、飲めて嬉しい」という気持ちで目頭が「ホロホロ」ってなる感覚です。

俺にとって、この「ホロホロ感」を強く感じるのが、奈良の「風の森」という酒です。純米規格なのに、大吟醸を作る時のように「袋吊り」という製法を採用しています。つまり、ボクシングのサンドバッグのように吊るして、滴り落ちる酒を溜めるのですね。かなり凝った造り方です。「秋津穂」という独特の米で作る酒は、爽快な酸味があり、俺は非常に「ホロホロ感」を感じます。

「風の森」でこの独特の「ホロホロ感」を味わうなら、「秋津穂」がいいと思ってきましたが、先日、「風の森・純米・山田錦」を飲みました。「秋津穂」と遜色がないほど、味のふくらみがあり、「ホロホロ感」を感じました。


真精精米率って、知ってますか?

おそらく知っている人は少ないのではないかと思います。このサイトを見てくれている人の中に、知ってる人がいたら、その人は日本酒のプロじゃないかと思います。
日本酒を作る時、玄米を精米しますよね・・・最低でも70% 精米することが酒税法で決められています。玄米を70%磨いて作ったお酒のうち、規定量以内の醸造アルコールを添加したものを“本醸造”と言います。70%精米で醸造アルコールを添加しないで、米だけで作ったお酒が“純米”ということになります。この精米率が、60%になると“吟醸”さらに50%以上、精米して作ったお酒が“大吟醸”となります。このそれぞれを、醸造アルコールを使わずに作れば、“純米吟醸”、“純米大吟醸”となります。 本醸造→吟醸→大吟醸 と進むラインは磨きの概念、それに対して、純米というのは、醸造アルコールを使っているかどうかの概念です。以前、お客様から「純米本醸造」と言われ、「それは白い黒板って言っているようなものだ」と笑ったことがあります。そんな酒は存在しません。存在することができないと言った方がいいと思います。矛盾しています。

前回、紹介させていただいたように、獺祭の磨き二割三分、通称「獺祭23」と言う酒を例に説明すると、米を23磨くということは、左の図のように、1粒のコメのうち、でんぷん質を多く含む中心部分23%を使って酒を造り、タンパク質の多い外輪部77%をヌカとして捨てるということです。 もっと大きな見方をすれば、米が100俵あったとして、それを磨いて、23俵にするということです。米が100kgあったとして、それを磨いて、23kgにするということですね。ちなみに一回の酒造りの工程で何キロの米を使うか、の量のことを「仕込み総量」と言います。最近は米の種類だけじゃなく、この仕込み総量も公開する蔵元さんが増えてきましたね。

さて・・・

100キロの米を磨いて、23キロにした・・・確かに磨き23ということになり、規格は大吟醸ということになります。でも、です。それで本当に終わりでしょうか・・・ もったいぶらずに種明かしをしますね。100キロの米を磨いて、23キロにした、この精米を“単純精米率”と呼ぶ人がいます。重量が100キロから23キロになればそれでいいのです。でもここで問題になるのが、100キロ分の米のすべてがきちんと磨けたか、と言うことです。磨いている途中で割れてしまい、酒になるまでに至らない米も出てきます。“単純精米率”は重量さえ、規定に達していればよしとするのです。これに対して“真精精米率”という概念を持っている人がいます。俺もその一人です。 今の米100キロの例で説明しますね。 話しを分かりやすくするために、100キロの特A山田錦があり、総粒数が1億粒だったとします。100キロの米を磨いて、23キロにした。その時総粒数も1億粒のままなのが“真精精米率”という考え方です。“単純精米率”と“真精精米率”を比較すると、7%の差が生じると言われています。つまり、100粒の米に関して、7粒は割れて使えないまま、酒造工程に入れられるということです。“単純精米率”で23磨きの酒は、もし“真精精米率”をあてはめるなら、磨き30ということになります。 “真精精米率”で30くらい磨いた“真精大吟醸”・・蔵元さんも作ったとしても、あえて公開しません。手に入れるのは難しいですが、確かにこの世に存在します。俺も正月くらいしか飲めないのですが、その味わいたるや、静寂が支配する音のない世界に、一滴の水が垂れて吟なる音色が静かに響くような荘厳な感じさえします。 この酒造年度、どこの蔵元が作っているか、正確には把握できませんが、作った実績のある蔵元、作る実力のある蔵元を紹介しておきます。

・天狗舞(石川県) 車多酒造
・龍力 (兵庫県) 本田商店
・梅錦 (愛媛県) 山川酒造
・北雪 (新潟県) 北雪酒造
・義侠 (愛知県) 山忠本家
・郷乃誉(茨城県) 須藤本家
・雨後の月(広島県)相原酒造
・酔鯨 (高知県) 酔鯨酒造




生酒・生詰・生原酒

この違い、分かりますか?

日本酒基礎知識として、お話しさせてください。

日本酒は製品として出荷されるまでに2回、火入れをします。火入れと言うのは加熱殺菌だと思っていただければOKです。 上槽時、つまりタンクに詰める時に1回、そして、タンクから瓶に詰める時にもう1回、火入れをします。

生酒と言うのは、この2回の火入れを全くしない酒のことです。当然、酵母が生きたまま瓶に詰められますので味が変化していきます。 今ではすっかり有名になってしまった「醸し人九平次」(愛知・名古屋)の純米吟醸・山田錦、通称「九平次純吟山田」と呼ばれる酒があります。この酒は火入れしてあるものでも、かなり旨いのですが、2月~5月頃に出回る生酒バージョンはまさに秀逸な一品です。生酒か、火入れしてあるかは、飲めば簡単に区別がつきます。

生酒は、かすかですが、舌先にピリピリくる刺激があります。発酵の妙です。そして味も「出来立て感」を伴うフレッシュな感じがします。

生詰と言うのは、2回の火入れのうち、タンクに詰める時の1回はするけれど、瓶に詰める時の火入れをしない酒のことで、十四代(山形・村山)、四季桜(栃木・宇都宮)などがこれですね。独特の酸味とうまみのバランスを保った逸品に仕上がります。

生原酒と言うのは・・・普通、日本酒というのは、アルコール度数が、15~16度くらい、大吟醸で16~17度くらいになるように、水を差して調節します。これを割水と言います。

2回の火入れを一切しない、しかも割水もしない、それが生原酒と言う酒で、俺は真っ先に「義侠」(愛知・佐屋)を思い浮かべます。アルコール度数を調節していない原酒ゆえ、18度くらいあり、どっしりとした「味の重み」があります。クックとハイペースで飲むとしたたかに酔います。先般いただいた「義侠・妙」、飲みましたが、やはり特A山田錦のうまさが、原酒ゆえの押しで「襲ってくるような旨さ」とでも表現したくなるような味わいでした。
(ツヨシ、美味しかったよ)

年が押しつまると出てくる、八海山のしぼりたて生原酒、アルコール度数が19度もあります。師走の名物酒です。




楯野川~純米大吟醸しか造らない蔵

俺がこの酒を初めて口にしたころは、吟醸系も造っていたのですが、平成22年から、醸造の全量を純米大吟醸にスイッチしましたね。

醸造アルコールは一切添加しない、米は高精白して使う・・・結果として生まれてくる酒は華やいだ香りが立ち、ゆっくりと冷蔵熟成された酒質は滑らかな舌触り、のど越しを湛え、ファンを魅了します。

今回は「楯野川・清流」という、「出羽燦々」という酒米を磨きこんだ純米大吟醸を地元の専門店で買いました。

この独特の香りと味のバランスは、刺激の強すぎないアテとともに楽しみたいです。

というわけで、「カマスの塩焼き」とともに飲みました。「出羽燦々」という、山形県独自の酒米の、芳醇な味わいと、カマスという魚の淡白さがマッチして、「う~ん」と笑いました。美味しかったです。








「缶入り旨口酒」~その手軽さ、いいですね

好適米を丹念に磨き、技を競うかのように造った吟醸酒を、凝った料理とともに味わう・・・

確かに疲れが取れて、至福のひと時ですよね。

でも、です。そうではなく、なんとなく手軽に酒を飲みたい時って、誰にでもありますよね。

「今日は仕事で疲れたから、日本酒で癒されたいな」そんな時って、大吟醸じゃなきゃ嫌だ、なんて考えるより、手軽に飲める酒と、手を掛けなくても用意できるアテが恋しくなります。

というわけで、缶に入った日本酒は、そんな時、good です。

「菊水」の「ふなぐち」という、新潟の酒です。

しぼりたての風味をそのままに缶に詰めるという発想は受けて、新潟県内第二位の出荷量を誇る蔵のランクを維持しています。

ビール感覚でサクッと飲めるのがいいですね。味は新潟酒特有の淡麗辛口と思いきや、どっしいした「濃さ」を感じます。芳醇な旨みというのとは違いますが、重厚感がガツンと「酒らしさ」を押してくるタイプです。「五郎八」を濾した印象です。

たまには、こういうタイプの酒も味わう俺です。スーパーで買ったレトルトのおでんと合わせました。

「酒は飲みたい、でも地酒専門の店に買いに行くのは時間がないし、アテを作るのも疲れて大儀だ」

なんて感じの仕事後に、こうした組み合わせ、どうですか?




九州の日本酒~その知られざる旨さ

九州は焼酎が主流であり、日本酒なんかあまり作ってないと思っている人、意外に多いのではないでしょうか?

確かに熊本や宮崎、鹿児島は抜群に旨い焼酎があり、九州最大の都市・博多には「小女郎」という何とも味わいのある焼酎があります。

日本酒はご存じの通り、酵母が米のでんぷん質を食べ、アルコール発酵することによってできます。酵母と言う微生物は活動しやすい温度があります。漬物を作る時、夏は冬より早く漬かる、あの原理ですね。

酒を造る酵母の場合、暑すぎても寒すぎてもいけないようです。日本酒の南限、熊本県、大分県あたりですね。事実、宮崎県、鹿児島県、沖縄県には蔵元はありません。(最近は沖縄で日本酒を造ることを試みている団体があるそうですが)

でも、です。九州北部は日本酒の醸造も盛んです。上のコーナーで紹介させていただいた、「杜氏の流派」に「九州流」と言うのがあるくらいですから。

こんにち、芳醇な、何とも味わいのある酒を造る上で重要な酵母である「協会9号酵母」は熊本県の「香露」と言う酒を造る蔵元で発見されたのです。それにちなんで、9号酵母のことを「熊本酵母」と言います。

さて・・・日本酒を造る上で重要な米である「山田錦」、生産量日本一なのは、言わずと知れた兵庫県ですが、2位の生産量を誇るのは、佐賀県です。さすがに兵庫県の特A地区の酒米には及びませんが、かなり良質の山田錦を産出します。佐賀県、いい酒がありますよねぇ。先日、赤羽の「リビリビ」で飲んだ「東一」(あずまいち)の大吟醸・生酒は本当に美味しかったです。かすかに澱がからんだ酒質は濃厚なうまみを一段と引き出している感じがしました。味が濃い、芳醇な甘酸っぱさがある、華やかな香りがある、まさに秀逸な大吟醸です。蔵元である五町田酒造は自社の田圃で山田錦を直栽培しており、「醸造界のシンガーソングライター」という向きのある銘醸造蔵です。

この蔵は化学物質を一切使わない無添加農作物にも造詣があり、自然のままで作った麹味噌も美味しいです。




「北雪」と言う酒~YK-35大吟醸ということ

ご存知ですか?

新潟・佐渡島の酒ですね。

この蔵の純米酒はとにかく辛くて味が大雑把と言う印象がありますね。神田あたりの安い飲み屋で、燗をつけて飲んでるようなイメージがあります。かつてはこの蔵から出ている「大辛口・+14」と言うのが日本で一番辛い日本酒だったように記憶しています。

ちなみにプラスいくつ、と言うのは日本酒度と言い、酒の甘辛を判断する基準のような数値で、プラスが大きくなるほど、酒は辛いということになります。酒に含まれる糖分の、水に対する比重で決まります。(今回は、日本酒度の話ではないので、「そういう数値があるんだ」くらいに心にとめておいてください)

俺の考えだけかもしれませんが、極端に辛い酒、プラス8を超えるような酒は、味が薄く、芳醇さに欠けるように思います。焼鳥やモツの煮込みと言った料理と合わせたい一献です。確かに「北雪」の下の方は、とにかく辛さがウリの、あまり通好みじゃない大衆酒です。

しかし・・・です。それは世を忍ぶ仮の姿です。「必殺仕事人」における昼間の中村主水のようなものです。この蔵の真の凄さは、何と言っても卓越した大吟醸造りにあります。とりわけ、その見事な味わいに魅了される酒徒が多いのが、「YK-35」パターンの大吟醸です。 大吟醸のスタンダードとして、このパターンがありますね。「北雪」のほか、兵庫・姫路の「龍力」、愛媛の「梅錦」などが「YK-35大吟醸」を造っています。

ここで言う
Y は、酒造好適米の「山田錦」
K は、上のコーナーで紹介した「熊本酵母」
35 は、「磨き35」

つまり、山田錦を35%精米し、協会9号酵母(熊本酵母)で造る大吟醸と言うことです。華やかな香りと味わいを併せ持つ一献は身のしまった刺身とでもともにやりたいです。

「北雪」、大吟醸だけでも20種類くらいあります。一升で10万円を超えるような芸術品もあります。俺は一升10万円する大吟醸を飲んだことがありますが、まったく光を通さない、倒しても割れないチタン製の瓶に入っていて、何とも不思議な陶酔感がありました。

この蔵から出ている真精大吟醸は「日本海府」といいます。先日、地元の和食屋さんで飲みましたが鮮烈に美味しかったです。ただ1合3,000円しました。




「屋守」・・・東京の「旨い酒」

俺は日本酒ソムリエとして、何県の酒か、ということはあまり重要じゃないと言ってきました。

ただ、郷土愛とか、自分の出身地の酒とか、そうした意識の中で酒を飲む場合に、やはり、どこの酒か、ということが問題になることがあります。誰だって自分の出身県にいい酒があれば嬉しいし、例えば富山県人会の宴席に島根県の酒を出すわけにはいきません。

日本酒は全国津々浦々ありますが、東京都の酒というと、「え?」という反応をする人もいます。東京のような都会で酒を醸している人がいるのか、という驚きのような感覚でしょう。

やはり、日本酒を地酒という概念で見た時、それは田園風景の広がる地方で造られていると考えられてしまうようです。だから東京の酒というと、どことなくインパクトがあるのだと思います。

東京にも日本酒を醸造している蔵元はあります。23区内にさえ、赤羽(リビリビの近く)に「丸真正宗」という酒があります。

最近は昔と違って、農業でも、肥料とか、栽培方法にこだわった野菜が多く出回っています。特に若い人がそうした「こだわりの農法」に夢を賭けているのです。おのずと消費者の「食に対する意識」も高くなります。

日本酒造りもそうです。若い情熱家が夢を載せて製法を研究し、いい酒の開発にしのぎを削ります。おのずと愛好家は「酒のレベル」が上がって行くのを楽しめます。そうした蔵元、東京にもあります。

「屋守」と書いて「おくのかみ」と読みます。東京都東村山市の酒で、蔵元は西武新宿線久米川駅の近くにあります。高知や佐賀の蔵元に行く時は、多額の交通費を払って、泊りがけで行くのですが、この蔵元はわずか1時間で、その気になれば自転車で行けます。

今回飲んだのが、純米吟醸の無調整生です。酒造好適米を55%に磨き、濾過やアルコール度数調整を一切しない。しかも生ということは火入れもしないということですね。かすかですが滓が絡んだ感じが独特のフレッシュな酸味を添えていて、高精白による旨味との間に、絶妙なバランスを際立たせていました。

まだ若く研究熱心な蔵元当主は、4代目だそうです。これからが楽しみです。




陸奥八仙・特別純米酒を寿司とともに・・・

寿司を食べに行った折にいただきました。青森・八戸の酒ですね。

寿司屋の大将が青森出身なので、青森県の名だたる銘酒が並んでおりましたが、寿司という食事を楽しみながら、「食中酒」として一杯だけ味わうなら、この陸奥八仙の特別純米酒がいいと思いました。

青森県が誇る好適米「華吹雪」を丹念に磨き、「まほろば吟」という青森で発見された酵母で醸した酒は、大吟醸のような、駆け上がるような香気はなく、かすかな甘さと、それを支える酸味が寄り添うように押してきます。

新鮮な魚介の持ち味を邪魔しない、控えめな香りと、ネタのおいしさを「下支え」するような米の旨み・・・実にいい取り合わせです。

寿司とか、会席料理とともに「食中酒」として、味わうなら、いたづらに香りを追うことのないこうした酒、いいですね。




陸奥八仙・夏吟醸

使用米の「華吹雪」は、青森県でよく使われる酒米ですね。

それを55磨き、14°と低アルコールに仕上げた一献は、ややビターな味わいで、夏に日本酒で喉を潤すという感覚にはうってつけです。

初夏から本格的な盛夏に向けて出回る「夏吟醸」という規格・・・俺はこの「陸奥八仙」が好きです。

それを夏に時期を迎える野菜をアテにやると応えられない口福です。

というわけで「野菜のぬか漬け」です。吉祥寺の有名な漬物屋さんで買い求めた漬物です。ぬか漬けは発酵食品であり、乳酸菌の力を利用するため、夏は早く漬かりますね。しかも「いい味」になります(ちなみに日本酒造りにも乳酸菌は重要ですね。その取り入れ方で、「生酛(きもと)」か「速醸」か、分かれます)

発酵食品同士、日本酒には「いいアテ」だと、俺は思います。季節感があります。

それと、「チェリートマト」です。普通のプチトマトより甘みがあり、抹茶塩をつけて食べると、最高です。

いつもよくしてもらっている魚屋さんで紋甲イカの刺身を買いました。

それと、地元で有名な「西島ミート」のローストビーフです。

「切り落とし」の部位なのですが、本体と遜色ない味わいで、売り出されるとすぐに完売してしまうのですが、若旦那と仲がいいので、融通してもらいました。キリキリに冷やした日本酒で涼感を楽しむ感覚、夏の日本酒嗜好の醍醐味ですね。




龍力・大吟醸「米のささやき」

言わずと知れた、兵庫・姫路の「本田商店」が、年間2000俵もの特A山田錦を駆使して醸す銘酒ですね。「いい酒を造るには、まずいい土地を買え」というのが蔵元に伝わる社是だそうです。

そのくらい、特A地区にこだわり、同地区に自社の田圃を所有し、農家と契約を交わし、特A山田錦を「作ってもらい」、全量を買い上げるという徹底ぶりです。

例えば東京の千代田区でも「大手町」や「麹町」というふうに、細分化された地名があるように、特A地区の、更に「なんというエリアで獲れた米か」ということにまで、こだわりぬいています。

結果、この蔵元が、天下無双とするのが、特A地区の中でも「秋津」と呼ばれる集落の田で収穫された米です。その「秋津」を酒名にしているほどで、龍力の最高峰になります。

俺が愛飲している「米のささやき」は、その次席に来る一献で、YK-35パターンの、妥協を許さない造りには、いつもながら感動させられます。

鼻から駆け抜けるような吟醸香、どっしりとした米の旨み・・・すごいです。「日本のロマネコンティ」と言われるのもうなずけます。「酒を造るには、まず田んぼから」という姿勢が、ワインの銘醸造家が、ブドウの畑にこだわるのと同じです。

本当は「米の自己主張」と言ってもいいのに、あえて「米のささやき」とするあたりが、この蔵元の謙虚さと、自信をうかがわせます。

ゆっくりと時間をかけて楽しむ酒だと思います。寒い時期に美味しいブリの刺身とやりました。微視的な見方をすると、ブリの脂が俺の唇に付き、杯をあおる時に、その脂が酒の表面にパッと広がる・・・この楽しみ方です。

特A地区というのは、龍力の蔵元がある姫路からは少し離れています。六甲山脈の北側、東条町、社町あたりが該当します。訪れた時、加古川線という電車にのりました。





「房島屋」・おりがらみ~白ワインのような日本酒

岐阜県に「房島屋」という酒があり、だいぶ以前から愛飲しております。

この蔵の酒は大吟醸とか、いわゆる「ランクが上の酒」より、純米で、普通の造り方にアレンジを加えた酒の方が美味しいように俺は感じています。

蔵元である所酒造から出ている酒はすべてがそうというわけじゃないのですが、こうして造った酒はまるで白ワインのような口当たりです。

アレンジを加えるというのは、ごくごく普通に純米酒を造る過程で「何かをする」あるいは「何かをしない」ということの「俺流」の表現です。

「火入れをしない」とか「濾過をしない」というように「いじってある酒」ということです。

今回は、生酒「おりがらみ」ブルーボトルという一献を味わいました。この時期(飲んだのは10月の終わりごろ)だけ出てくる限定品です。説明するまでもないと思いますが、上槽時に、モロミが沈殿するのを待って、上澄みだけをサッと掬い、沈殿している「おり」という部分をからめて瓶に詰めて出荷するわけですね。

29BY、すなわち、1年置いて熟成させたわけですね。角の無い酸味が際立つ一献です。

以前から、その美味しさに驚いておりましたが、いやいや、変わることなく驚くほどの清涼感ですね。

それが生きたまま瓶に詰められる酵母の働きにより、口あたりは早めに変化し、フルーティーな味わいと酸味を伴い、まるで白ワインです。美味しいです。

ワイングラスで、空気に触れさせながらいただきました。

アテも「白ワイン的」であることを意識して、「太刀魚のバター焼き」です。

太刀魚は白身で淡白な魚なので、舞茸とともにバター焼きにして、こってり洋風なアテにして、白ワインのような日本酒と合わせました。

自分でチョイスした酒に、自分で考えて作った料理を合わせて楽しむのも、くつろいだ時間になります。




「鍋島」・・・頼むことを読まれていた例

実弟と、赤羽のリビリビに行ってきました。

店主のこーちゃん(少しだけイケメン)は、店主らしさも、利き酒師としての技量も、だいぶ付いているように見えました。

店主のアドバイス、というか、教えを乞うようなお客様から「こんな感じの酒が飲みたい」的なリクエストを受け、きちんと意に沿う酒を注いでました。良く勉強し、研究している様子でした。

今や日本酒ソムリエではなくなり、金融系の会社の事務員になった俺、今の俺が勉強するのは日本酒のことではなく、パソコンとか、効率よく、しかもミスなく事務をこなすためのスキルとかです。そうしている間に知らない酒がずいぶんと出て来たようです。

店主はそうした日本酒の動向にアンテナを張り、自分の舌で確かめ、抜群の品質管理で提供していました。

俺も、日本酒ソムリエでなくなったいまだからこそ、好きな酒を好きなように飲めるわけです。聞いたことのない酒でも、瓶の裏のラベルを見れば、どんな酒か、分ります。「思った通りだった」という楽しみ方ができるようになりました。

俺はアドバイスを受けずに、自分で好きな酒を注文して、弟と注ぎ合って飲みましたが、俺と付き合いの長い こーちゃん は「やはりね、ヒデちゃん、絶対にこれを頼むと思ってた」なんて言います。飲んだ酒はどれもよかったのですが、俺としては「鍋島・愛山」が良かったです。「鍋島」というと山田錦というイメージがあるのですが、心白米の代表格である「愛山」で造った「鍋島」、喉に膨らんでいく感じが最高でした。

だいぶ飲んだけど、足がもつれることもなく無事に電車で帰ることができて、楽しい酒でした。



画面中央の、鞄を肩に下げてる方が俺です。隣が弟です。店主のtwitterから転用しました。開店の日の写真です。



「愛山」という酒米

弟よ、ここを読んでね。笑

↑の続きです。

赤羽のリビリビに兄弟でお邪魔した際に、どうも弟が「愛山」という酒があるのでは、と勘違いしているフシがありました。弟に限らず普通の会社員で、そこまで理解している人はいないと思いますので、いつぞや、当サイトに掲載した、酒米の話を再掲します。

普通の酒飲みは新潟や秋田の酒が最高に旨いと思ってるようです。それは、新潟や秋田が「米ところ」だからです。イコール酒もうまいと思ってしまうようです。

確かに新潟や秋田にも旨い日本酒はあります。でも、この県の酒が最高か、となると疑問です。

それは食べて美味しい米と、日本酒を造る米は違うからです。コシヒカリやササニシキで酒を造っても、旨い酒はできません。日本酒を造るのに適してる米を「酒造好適米」と言います。

俺が日本酒ソムリエとして、長年言ってきたこと・・・酒を造る米は、何といっても兵庫県に勝る産地はないということ。俺は、まるでうわ言のように「兵庫県産特A山田錦」と言ってきました。今でもその考えに変わりはないのですが・・・

「愛山」(あいやま)という米をご存知ですか?

酒を造るための米は粒が大きいこと、正確に言えば、中心部分の心白というでんぷん質の部分が大きいことが肝心です。愛山は山田錦より粒が大きく、心白も大きいのです。山田錦に比べて磨きにくいという難点があります。しかし、です。時間をかけて丹念に磨いて作る酒には、風格さえあります。特A山田錦と並び、兵庫県の代表的な酒米ですが、山田錦が脚光を浴びるなか、表向きは栽培が打ち切られるなどの不遇もあり、愛山は一部の蔵元が契約した篤志農家に栽培してもらっているような位置にいました。

その愛山が一躍有名になる契機、やはり十四代の存在が大きいと言えます。十四代の登場はそれまで主流だった「淡麗辛口」系の酒を根底から覆し、「芳醇旨口」系という、いわゆる現在のようなフルーティーな、ワイン感覚な日本酒という味わい方を世間に問い、それが多くの人に受け入れられました。そうした「芳醇系」の酒を醸すのに「愛山」は最高に適しています。

粒が大きい酒米であるがゆえ、栽培も難しく、山田錦ほどの安定供給ではないことから「幻の酒米」と呼ぶ人もいます。

十四代の愛山は高い上に、入手困難で、飲み屋さんでも、きちんと管理できる日本酒のプロがいる店にしか、流れません。最近は愛山を使う蔵元さんも増えましたね。俺が推す愛山使用の酒は、群馬・館林の「尾瀬の雪どけ」です。香りといい、広がる含みといい、本当においしいです。いくらおろし、生うになど、あまり手を掛けなくても味わいのあるアテと合わせたいです。




風の森・愛山

弟よ、更にここを読みなさい。笑

「風の森」を初めて知り、その見事な美味しさに魅了され、自分が働く店でも扱うようになった頃、使用米は「秋津穂」が主流でした。風の森の蔵元がある奈良県で主に栽培されている米ですね。

独特の酸味があり、微発泡なのは、火入れをせず、純米酒にも拘わらず「袋吊り」という凝った製法で造るからですね。

そして、この酒が広く受け入れられた背景には、そうした凝った造りがもたらす美味しさと同時に、この酒が安価で出回ったこと、つまり「コストパフォーマンスの良さ」があったと思います。

日本酒ソムリエをしていた時分、大手ゼネコンの役員が、よく飲みに来てくださっていたのですが、

「ヒデちゃん、この酒、本当に700円でいいのかよ?」

なんて仰天していたことを覚えています。

そうしてメジャーになるに従い、米のバリエーションも増えました。

山田錦を使った、「袋吊り滴搾り」には、広がるような米の「旨み」があり、俺が「ホロホロ感」を感受する一献です。

そうした「どんな酒にも最高の製法で望む」姿勢の蔵元が、俺が大好きな酒米・「愛山」を使って醸した一献・・・美味しくないはずはないです。

愛山については、上のコーナーで弟に説明している部分を読んでいただければわかると思いますが、山田錦と同じく、兵庫県産が最高の酒を造る上で重要です。「愛山は兵庫県じゃないと、できない」と言っていいと思います。心白、つまり中心部のでんぷん質が大きい故、酵母が良くくっつき、果物のような味わいになります。濃醇で、かつフルーティーな酒になります。山田錦とは違う旨みです。

愛山は貴重な酒米なので、今や愛山使用の酒はほとんどが「限定品」になってしまいましたね。でも、今回手に入れることができてよかったです。

フルーツを思わせる口当たりに、無濾過ならではの微発泡・・・まるで「ジャパニーズ・スパークリングワイン」と表現したくなるような出来です。

本鮪のブツ、カボチャの煮物と味わいました。

とても相性が良く、よく働いた疲れを癒してくれました。

余談ですが、ラベルの図柄、素敵ですよね。人里から少し離れた寂しげな森に、風が吹いている・・・幻想的な気がします。「雨月物語」の世界ですね。




風の森・愛山を初カツオとともに・・・

風の森・愛山・・・何度飲んでも美味しいですね。会社の同僚にねだったらすんなりプレゼントしてくれました。

「愛山807」とは、磨き80で、7号酵母を使って醸した酒ということに由来するネーミングです。

この蔵の、このシリーズは低精白ながら、それを感じさせない出来栄えですね。いつも感心します。80しか磨かないのに、優しさを湛えたフルーティーさを演出できるものだと不思議な気さえします。しかも愛山独特の円熟したどっしり感も備えています。

7号酵母・・・長野県の「真澄」という蔵元で発見された酵母ですね。

9号酵母が大吟醸など、「精魂込めた酒」の風格を作り出すのに対して、この7号酵母は芳香の発出がよく、発酵力が強いことから、普通酒クラスの醸造に用いられることが多いのですね。俺独自の言い回しで「小回りが利く酵母」と、勝手に表現しています。

ですが、両酵母とも、この一献の作りに関しては遜色ないですね。ホロホロ感というか、クリスタルな感じさえするのは、やはり愛山が持つ属性と、無濾過無加水生酒おまけに袋吊りという製法によります。シャンパンのような軽快なガス感があるのも健在です。



いつもの魚屋さんに出向くと、俺を待っていたかのように、入ったばかりのカツオが目に飛び込んできました。

お世話になっている女性店長と会社の同僚が通じていて「今日、飲むらしいです」と申し合わせたのじゃないかと、妄想してしまいます。

飛びつくように「腹側」を柵で買い、自分で引いて刺身にしました。酒の芳香を損なわないように、ワサビではなくおろし生姜で食べるのも「お約束」です。

それと「クレソンのお浸し」、「大山地鶏の塩焼き」です。

クレソンはステーキなどの付け合わせに使われ、彩りだけで食べない人も多いのですが、お浸しにしたり、バターソティにしたりすると、いい香りで歯ごたえもいいです。ちなみに俺の母はクレソンのフリッターをビールのアテに作っておりました。

初夏のはしりのカツオの美味しさ、愛山のフルーティーでいて重厚感のある推し、絶妙なガス感、とてもとても幸せな酔い心地でした。

同僚に感謝します。





風の森・愛山をキハダマグロとともに・・・

会社の同僚の系統で手に入りました、「風の森・愛山」です。

今期最後の2本だそうです。同僚が1本召し上がり、もう1本をオイラにくれました。

今期最後という意味が判然としませんが、「この酒造年度」という意味なら、いただいたのは6月で、普通、どこの蔵もカスカスになる時期で、7月に新しい23BYという酒造年度がじきに始まるので、また初冬の搾りの時期には、最新のBYで出て来ると期待しております。

やはり透明感のあるフルーティーな広がり、微発泡な刺激、いいですね。変わらず見事です。

ビントロじゃなく、奮発してキハダマグロを柵で買い、刺身に引いてアテにしました。

あとは、東京Xの焼きしゃぶを自家製ゴマダレでいただく、カツオ出汁で炊いた玉こんにゃくです。

ラベルの字体,変わりましたね。

和風の字体のタテ書きだったのが、明朝体のヨコ書きになりました。

オシャレなフレンチレストランのメニューみたいです。

ボトルのサイズを国際規格である1500mlに変えた商品もあるなど、いよいよ本格的な海外進出の機運が高まっていますね。





風の森・秋津穂

いつも言っていることですが、「風の森」には、大きな感動を貰っております。

出会ってから、かれこれ25年になりますが、味わいが落ちないどころか、進化の歩幅の飛躍的な点にも驚かされます。

槽(ふね)という「搾り機材」を使わず、「袋吊り」し、滴った部分を集めて、濾過も割水もしないで、生原酒として世に出す。その丁寧な造りは「見事」の一言に尽きます。

無濾過ゆえ、瓶内でも発酵が進み、微弱なガス感があります。それが「開栓時に栓が飛ぶ恐れがあります」と注意書きしてあるのも嬉しいですね。

グラスに注いだ時に気泡が付いたほどです。

会社の同僚が奈良県へ行ったお土産として、「風の森・秋津穂」をくださいました。

今回は「低精白」シリーズではなく、65まで磨いて、7号酵母で仕上げる「657シリーズ」です。

風の森が出始めた当初、今のように「米のバリエーションを楽しむ」という要素は希薄で、この「秋津穂」という奈良県の酒米がメインでした。

あまり、「米栽培」という印象を持たれない県ですが、どうしてどうして「秋津穂」はいい酒米です。

いまや30軒ほどになってしまった栽培農家のうちの、特に優良な秋津穂を産出する農家と契約を結び、風の森の味わいを出すに足る秋津穂を「育ててもらっている」のです。

果実を思わせるような立体的な膨らみは、新鮮な鮮魚と合わせたいと思い、鮪の中トロです。それから、舞茸とアスパラをグリルして、白ダシでいただく「焼き浸し」もこしらえました。

あと、最近、日本酒をやる時に漬け物が好きなので、べったら漬けです。

格式のある料理屋さんでファーストオーダーに漬け物を頼むのはNGですが、宅飲みでは、自分の好きなように楽しめます。

初しぼりで、寿ぎを込めて、「笑う門には福来る」というラベルのことわり書きも、縁起のいい飾り付けも、新しい年の酒の風情で、フルーティーかつ「どっしりとした推し」の酒質に華を添えます。

同僚に感謝します。





「妙」という名の酒・・・銘酒「義侠」の最高峰

名古屋で青年実業家をしている旧友が、上京するとお土産にくれます。「義侠」の最高峰ですね。

この蔵の酒は平均的な製品でも、かなりな水準にあるのですが、そうした中でもトップレベルを行く最高の一献です。

俺は寝かせた酒より、絞ったばかりの酒を、時間をおかずに飲むのが好きなのですが、この「妙」に関しては、それが違うのです。寝かせることによって、驚くほど「円い酒」になります。

特A山田錦を30磨く。これだけでもかなりいい酒ができます。

この酒を絞った時点で、すぐには出荷せず、低温で貯蔵します。酒が一斗入る瓶に貯蔵して、冷暗所でゆっくりゆっくりまろやかにするのです。いわゆる「斗瓶取り」という製法ですね。これを酒造年度別に、最高の味わいになるようにブレンドします。最低でも3年、長いものでは10年、低温貯蔵した、特A山田錦30磨きの酒を、独自の味覚でブレンドするのです。

したがってその味わいは年度ごとに違いますが、総じて言えるのは、角が取れた円熟の旨みですね。若いバナナのような芳醇な香りが立ち、その中にかすかに漂うような微弱な酸味・・・

イメージを説明すると、細い路地の先に広い空間がパッと開ける感覚です。かといって、いつまでも口奥やノドに「味が居座る」という感覚は全くなく、サラリと六腑に落ちていきます。「妙」と名付けられるだけあって、本当に「綺麗な酒」です。

こういう「すごい酒」を飲むときは、やはり出来合いのアテを買うのではなく、自分で丹精込めて料理を作った方が、より美味しく飲めます。

というわけで「カサゴの煮付け」です。カサゴは魚としては、少々高い部類に入りますが、「妙」なんて、滅多に口にできる酒じゃないので、買って、裁いて、煮つけにしました。本当に美味しかったです。

「義侠」の蔵元「山忠本家」は、「龍力」の「本田商店」と肩を並べるほど、特A地区にこだわった蔵元です。中でも東条町の山田錦に熱い思いを注ぎます。特A山田錦の事を「東条町産特上山田錦」と表現します。「特上」という響き、いいですね。





新酒の頃

街が慌ただしくなる師走の時期、ひと時の安らぎを求めて飲みに出かけました。一人で、です。

気心の知れた こーちゃん(少しだけイケメン)と、懐かしい話をアテに飲むのもいいものです。

年の瀬から年初にかけて、日本酒は本当に美味しい時期を迎えます。それは搾ったばかりの新酒が出回るからです。

この日、飲んだ「山本」という秋田の酒の「あらばしり」、最高でした。酒を搾る時、圧力を架けなくても自重でほとばしる部分を「あらばしり」と言います。昔は蔵元にお邪魔しないと飲めないような部分でした。

広く日本酒のことが世間で認知され、その拘った製法が知られるようになって出てきた酒質ですね。

俺も現場で働いている頃、「初亀」(静岡)、「松の司」(滋賀)などを使っていました。いずれにしろ、「あらばしり」というと、1月の酒というイメージがあったのですが、12月で、すでに出回っているのだと思いました。同じように秋の酒である「ひやおろし」も、9月を待たずに、8月後半に出ますから、季節の先取りは日本酒の世界にも重要なことなんだと感じます。

「山本」のあらばしり、絶品ですね。自然にあふれ出てくる酒質の味わいは「フレッシュな野趣」とでも言えば、お判り頂けるでしょうか?

「あらばしり」に対して、次に出てくる、酒質の安定した部分を「中取り」とか、「中垂れ」と言いますが、そうした部分にはない、手を加えてない自然さが「あらばしり」の魅力です。

「鍋島」(佐賀)の新酒もいただきました。こちらも独特のフレッシュ感が爽快でした。最近では「鍋島」は、

新酒は new moon

秋に出る「ひやおろし」は harvest moon、

夏吟醸は summer moon

というそうです。ラベルも洒落ています。





「八反」~広島の酒造りに欠かせない酒米

いつかこのサイトでも触れたように、日本酒を造る杜氏には流派があります。

細かく数えたらキリがないのですが、大きく分けて5大流派、そのうちの一つに「広島流」という流派があります。「安芸津流」とも言います。

がっちりした骨太の酒に対して、広島流に伝わる製法は「繊細で」「香りと味のバランス」が絶妙な「たおやか」な感じの酒という印象です。

そこには広島ならではの酒米「八反」の影響が大きいと、俺は考えます。

心白米であり、粒が大きいことは他の酒米と同じなのですが、例えば「山田錦」が独特の「旨み」を醸し出すのに対して、「八反」は、香りを併せ持ちます。

女性に例えるなら、「山田錦」が「清楚な美人」、「八反」は「綺麗に化粧をした美人」、そんな印象を、俺は持ってます。

「八反」は、倒れやすい、稲を犯す病気に罹りやすいなどの弱点がありましたが、それを克服したのが、「八反錦」ですね。ともに広島県を代表する酒米で、いまや全国規模にその名声は轟いております。

「龍勢」という広島の酒を飲みました。純米酒です。やはり、たおやかな感じのする、香りの立つ一献でした。口やノドだけじゃなく、鼻でも楽しめる酒だと思います。




鳳凰美田~あぁ、旨過ぎる

質の高さと、たゆまぬ研究心で、今や大人気銘柄に育った一献です。

蔵元は栃木県小山市にあり、お邪魔した時は湘南新宿ラインで行きました。

低価格帯の酒を造るにしても、ほとんどの製品に大吟醸を作る時の「袋吊り」という手のかかる製法を採用し、妥協しない真摯な姿勢が多くの酒好きに指示された結果です。

いまや、男性が意中の女性を日本料理屋に誘い、センスのいいところを見せようとする時に、「鳳凰美田」をチョイスするという記事も、目にしました。

「袋吊り」という製法は機械化できない部分がほとんどで、蔵人たちの手作業によって、見事な酒が造られます。それゆえ、品薄で入手できなくなることもあります。その味わいは、果物の甘味と酸味のようなバランスの中にかすかな渋みを入れたようで、心安らぐ旨さは女性にも受け入れられると思います。

俺も会社の納会にこの酒の「純米吟醸・碧判」という酒を提供したことがありますが、一緒に働くメンバーの受けは良かったです。また春先に出てくる「しずく絞り無濾過・生」という一献、かすかに白濁があり、春の霞のようなので、「かすみ酒」と呼ばれていますが、これも絶品です。

先日、「鳳凰美田」の大吟醸を飲みました。「赤判」や「フェニックス」とも違う、一部の店にしか流通しない、特別製の大吟醸です。

聞いたところによると、愛好家が集まって、「こんな米を使って、こんなふうに仕上げてほしい」と蔵元にお願いして、できた酒をすべて買い上げ、仲間内で分けるそうです。一種のPBです。どうりで見たことのない一本だと分りました。兵庫県西脇市の山田錦(味のふくらみからして、たぶん特A)を丹念に磨き、吊るして絞った大吟醸は「丁寧な手造り感」があり、感動した一献でした。

アテに頼んだ、「イワシの明太子焼き」との相性も良かったです。




サーモンピカタでハイボール~良く働いた休日はやはり飲みたい!




朝早く起きて掃除をし、午前中にはジムも済ませる。暖かくなったので、リビングに敷いてあったホットカーペットをしまう。買い物をして、アイロン掛けして、webの勉強もする。

こんなふうに一日有意義に働いて頑張った日は、美味しいものを作ってお酒を飲みたくなります。

病気というか、障害を得て、「ヒデちゃん、今でもちゃんと料理するの?」なんて先日、フレンドに言われたけど、この通り、今でも全く変わることなく普通に料理できます。

サーモンは水気を切り、レモンの汁でにおいを取り、塩、胡椒で下味をつけます。小麦粉を薄くはたき、溶いた卵にくぐらせます。片面を焼いた所で返し、もう片面にトマトのスライスをのせ、チーズで閉じます。焼け具合が分るように、透明なフタをして、熱を籠らせます。

焼き上がりのアツアツのうちにハイボールとともにいただきます。





智恵美人~再会できた酒

久しぶりに出会い、旨さを堪能しました・・・智恵美人。

この酒、俺が日本酒ソムリエとして、赤坂で働いていた頃は、一種の「静かなブーム」的な酒で、この酒を知っている人はかなり「日本酒通」と言うイメージがありました。

それからしばらく、不思議なことに、あまり見かけなくなってしまったのです。それはまるで大きな震災の後に物資がなくなるような、そんな印象でした。でも、きちんと造っていたんですね。良かったです。

若き6代目の中野淳之さんは東京農大で醸造学を学んだ人で、日本酒造りに夢を賭ける若き醸造家が淳之さんのもとに集まり、こんにちの柔らか味を湛えた美酒を醸しています。

しかも、今回飲んだ一献のラベルを見てください。鏡文字です。と言うことは普通一般には流通していない、レアな一品であることが分ります。磨き60の生原酒です。俺の好きなタイプの酒です。味が濃い、フレッシュなピリピリ感が鼻孔と咽頭に広がる。嫋やかな味わいを予想していましたが、しっかりした味が迫って来るような強い押しのある旨さでした。

アテに頂いた「イワシの明太子焼き」との組み合わせもよかったです。





ちえびじん~純米吟醸・山田錦

山田錦と言えば兵庫県が開発した酒米ですが、意外にも九州、特に福岡、佐賀、大分県でも多く作付けされています。

この一献は大分産山田錦の味を余すところなく引き出していると感じます。

2019年6月「KURA MASTER2019」純米酒部門において金賞を受賞したことからもわかる通り、外国の日本酒通の人が「ワイン感覚」で楽しめる味わいです。

立ち上がりが控え目なのも、ワインに通じるものがあります。グラスに注ぎ置きして、空気に触れさせることで、まるでメロンのような香気が立ち上がります。

「美人」と名付けられた酒だけあって、優しく、たおやかに香りが刺激してきます。

山田錦由来の甘やかな丸さが、フルーティーな吟醸香と相まって、優しく押してきます。

スズキとズッキーニをオリーブオイルで焼いて、にがり分の多い、味わい深い塩で食べる、と合わせました。ともに夏の食材ですね。旬の美味しさです。もう一品は鶏むね肉を蒸して、胡瓜の細切りと一緒にしたものに、練りごまに味噌を加えて、みりんで伸ばしたタレを掛けた「和風棒棒鶏」です。

フルーティー系の甘味がしっかりしていて、料理との調和が取りやすい酒質ですが、シンプルな「塩」とか「ごま味噌」といった、甘やかさを引き立てるアテと相性はいいと思いました。

美味しさに感動しました。




我流の焼き茄子とビール~仕事の後、至福のひと時

仕事が忙しく、あくせくした時って、仕事終わりに冷たいビールなど、キューッと飲みたいですよね。

所帯持ちだと、愛妻が手料理を作ってビールなど、冷やしておいてくれるのでしょうが、残念ながら俺はひとり者なので、そういうわけにもいきません。

帰りに立ち飲みにでも寄って一杯やって行こうかと思うのですが、やはり家に帰り、スーツを脱いでリラックスできる格好になってから飲むほうが落ち着いて、よりおいしいです。

そこで必要になるのが手軽に作れるアテです。そんな時、焼きナスでビール、これが最高です。

本格的な料理屋の焼き茄子は炭火で焼いて、金串を刺し、皮を剥いて供しますが、自分で食べるなら、皮など剥かないで、茶筅に切り、油を多めに引いたフライパンで焼けばOKです。それに生姜と鰹節をかけ、醤油で食べる。手軽で本当に美味しいです。茄子はとても油を吸うので、キャベツなどを炒める時より多く使います。焼き茄子を作っている間、缶ビールは冷凍庫に入れておきます。

焼き茄子と冷え冷えのビール、疲れも癒えます。




田光~手作りだからこそ、旨い

障害を得て、日本酒ソムリエが続けられなくなり、4年になりました。

その間、酒は飲んでおりますが、やはり現場で働くように、現在の動向にアンテナを張る、という感じではなくなりました。

そうしている間に、知らない酒も出てきたようです。久しぶりに一人でふらっと飲みに出かけ、「日本酒の最前線」を体感してきました。

飲んだ酒はどれもよかったのですが、俺が「はぁ~、素晴らしい」と感嘆したのが「田光」(たびか)という三重県の純米酒の「ひやおろし」です。

原酒ゆえの「味の濃さ」と、ひと夏を寝かせた熟成の「まろやかさ」が相乗的に訴えかけてくるような酒質の見事さに「爽やかに打ちのめされた」感をいただきました。

手で米を磨き、手で絞るという「手作りの酒造」であるため、あまり量産できないということです。飲めた俺もラッキーですが、店主にも「なんとまぁ、よく見つけてくるなぁ」と賛辞を贈りたいです。





「五十嵐」という酒~搾りたて新酒の爽快なフレッシュ感に仰天する

いやいや~素晴らしい出来栄えです。

冬が折り返し地点に差し掛かった頃って、搾ったばかりの新酒が出ますよね。この時期日本酒バーに出かけると、そういう搾ったばかりの「フレッシュな酒」を味わえます。

そうした酒が飲みたくて、出かけてきました。

中でも一番良くて、俺を仰天させたのが、この「五十嵐・純米吟醸、直汲み」です。

微発泡のシュワシュワ感と雄町米特有の酸味が見事に融合していて、火入れも濾過もしていない「できたて感」に感動させられました。28BYということは、平成28年醸造年度に造られたということで、まさに今年(平成29年)の新酒です。

いつもはいろんな酒を楽しみたいから、同じ銘柄は頼まないのですが、思わず「うまい!」と声をあげ、おかわりをしてしまいました。

埼玉・飯能の酒で「天覧山」という、どちらかと言うと地味な酒を造っていたのですが、こんな酒を造るようになるなんて、驚きです。

クラスで目立たない存在だった女子が、何年後かのクラス会で会ったら、すごいセクシィなレディに変身していたような印象です。

美味しかったです。





✚旭日という銘酒をアジのタタキとともに・・・

会社でお世話になっている人が、山陰に旅行して、お土産に「✚旭日」という出雲の銘酒をくださいました。

俺も赤坂で日本酒バーのソムリエをしていた折は、よく使っていた酒です。

「✚旭日」というと、「改良雄町」を高精白し、絞ったばかりの純米吟醸酒を、火入れも割水もしないで、「生原酒」のままで味わうのが多かったのですが、今回いただいたのは、ラベルを見ると島根県産「佐香錦」という酒米を55磨きで、しかも27BYということは、1年寝かせた、ということになります。(いただいたのは平成29年ですから)

おそらく、フレッシュ感というより、寝かせることによって醸し出された「まろやかさ」を楽しむ酒だろうな、と期待しておりました。

「佐香錦」という酒米も、存在はしっていましたが、俺としては(たぶん)初めて味わうことになると思います。

アジのタタキとともにいただいてみました。

やや辛めで、香りは抑え目で、味重視のつくりだと思います。できたての酒を、敢えて出荷せず、1年寝かせることで、酒質は,まるで夏を越して出荷する「ひやおろし」を思わせるものがあります。口腔を広げるような「味のふくらみ」があり、「いい頂き物をしたなぁ」と感じた一献です。





篠峯~山田錦・磨き40の大吟醸

先日、島根県に旅行して✚旭日をお土産にくれた同僚が、このたび奈良県に旅行しました。お土産に「篠峯」という酒をいただきました。

俺はカップに入っているような、いわゆる「飲み切りサイズ」の酒を買ってきてくれると想像しておりましたが、箱を見て、そして中身を見て、仰天いたしました。なんと山田錦を40磨いた大吟醸なんです。思わず会社の座席で「すげぇ!」と声をあげてしまいました。「篠峯」の最高峰の一角を占める一献ですね。何ともすごいお土産をいただいたものです。

こういう「すごいランクの酒」を味わうには、やはり休日にのんびりとジムなど済ませ、汗を流した爽やかなコンディションで、しかも美味しいものを作り、料理と合わせて味わいたいものです。

というわけで、入念に泳いで来て、鯛の塩焼きとともにいただきました。

酒の、バランスの取れた味の広がり、鯛の白身の淡白な焼けた身に大根おろしと醤油で食べる、いやいやー最高ですね。山田錦を高精白することによって、雑味が消え、心白の部分だけで造られることにより、旨みと、プラス、かすかな酸味が合わさった、気品のある出来栄えですね。

俺が美味しい酒を表現する時の「ホロホロ感」を惜しみなく感じました。感動した酒です。

奈良と言えば昨今は「風の森」が人気ですが、「篠峯」の造りも、「研究しているな」という印象を受けます。

同僚は旅に出る前「奈良にいい酒あるの?」なんて言っておりましたが、意外にも奈良県は「造っている処」です。再度訪れる時に役に立つように「和歌山線に乗る」というヒントを出しておきました。





「尾瀬の雪どけ」~特A山田錦・磨き39

「尾瀬の雪どけ」という銘酒があります。蔵元は群馬県館林市にあります。

造っている「龍神酒造」は平均精米歩合49%を誇る、吟醸志向の蔵元です。特A山田錦、愛山、地元産・若水といった好適米を丹念に磨き、多くの酒好きを魅了しています。

俺はこの「オゼユキ」の愛山が好きなのですが、すっかり人気が出てしまい、品薄の状態が続いています。

「オゼユキの愛山が飲みたい」と言っている俺に、例の会社の同僚が、「愛山ではないけれど・・・」と言って、プレゼントしてくれたのが、特A山田錦を39磨いた大吟醸です。またしても、何ともすごい酒をくれたものです。

休みの日に、ゆっくりと合うアテを考えて飲むことにしました。特A山田錦を高精白することによる、旨みと香り・・・酒名の通り、尾瀬の雪解け水で仕込むことにより、この酒には「清涼感」というイメージを持っています。今回は魚は敢えて避け、肉料理とともに味わうことにしました。地元で有名な「西島ミート」という店の絶品ローストビーフを買い、アテにしました。しかもついているタレじゃなく、醤油とワサビでいただきます。ローストビーフは脂身がないので、「肉の刺身」という感覚です。

いやいや驚きました。相性抜群です。いままで「オゼユキ・愛山」を愛飲していましたが、やはり特A山田錦を39磨いただけのことはあります、清冽の中に米の旨みがあります。この旨みが俺が言うところの「ホロホロ感」です。特Aの風格ですね。それがローストビーフとマッチして、口の中が極楽です。満ち足りた休日になります。

俺は、この同僚がどこかへ出かける時、いつも言います。

「ほかの人には買ってこないとしても、私にはお土産を買ってきてね」

そんなことが言える俺、ずうずうしいですよね。

でも、今のところ、同僚の「酒選び」、外すことなく、的確にいい酒を購入していると思います。

この酒を買う時、酒屋さんで「何BYか?」を尋ねたそうです。酒屋の人は「むむむ・・・この人、デキる!」と思ったことでしょう。笑えます。





「大那」の純米大吟醸を楽しむ

例の会社の同僚が栃木県にドライブし、「大那」という酒をくださいました。

くれた、というよりは、俺がねだった、という感じです。

「栃木県に行くならお土産は大那にしてね」と言いましたから。

蔵元は大田原市にあり、関東北部を代表する銘醸造蔵です。しかもプレゼントされたのは、今回も、特A山田錦使用・磨き40の大吟醸です。何とも奮発してくれたものです。

この蔵の特徴はなんといっても生産量を少なくセーブし、手作りすることですね。タンクから直汲みして一本ずつ瓶詰めする姿勢は、丁寧な仕事ということの大切さを重々感じます。

その姿勢で山田錦を丹念に磨き、例えるなら果物のマスカットのような微弱な酸味がノドをかすかに刺激していく、それと合わせて特A山田錦の旨みが口中に広がる、いやいやまたしても美味しい酒です。

「山田錦を磨きこんだ大吟醸なんで、含みや酸味を殺さないアテがいいだろうな」と予想し、淡白な味わいの甲イカの刺身とやりました。しかもワサビは鼻にツンとくる懸念があるので避け、生姜で食べました。

薄く削いだようなイカの刺身を舌に張り付け、それを酒で流す・・・いい取り合わせです。

最近疲れ気味だったのですが、疲れが一気に吹き飛びました。

いつもながら、いい頂き物をしました。





チョイトひと手間の工夫で酒のアテにする

↑の続きです。

唐突ですが、缶詰、手軽ですよね。蓋を開ければすぐに食べられるのですから。

ただ、その手軽さ故、美味しい酒のアテにすると、「手抜き」と取られかねない部分もあります。

そこで、ちょっと一杯ひっかけるにも、じっくり飲むのにも、缶詰に「ひと手間」掛けるのはどうでしょうか?

鮭の缶詰って、手ごろで美味しいですよね。それをそのままアテにするのではなく、オニオンスライスと合わせて見てください。本当に美味しいです。

玉葱は包丁でどこまでも薄くスライスします。包丁で打つのが苦手な方は、スライスする調理器具が500円くらいで売っていますので、それを使ってもいいですね。

スライスした玉葱を水に晒して、水気を切ります。玉葱のからみ成分が水に溶けてしゃっきりします。これを鮭缶に載せ、鰹節をトッピングします。

醤油を掛けて食べると、本当に日本酒に合います。

ただ缶詰を「ぱっか~ん」と開けるよりも、こうした「ひと手間」を添えることで、きちんとしたアテになります。

先週、大那の純米大吟醸をイカ刺でいただき、今週用に取っておいたのですが、今日、「鮭とオニオンのアンサンブル」とともに全部飲んでしまいました。

美味しかったです。酒もアテも。




「夜明け前」~金紋錦の純米大吟醸

信州に「夜明け前」という銘酒があります。島崎藤村の小説を連想して、木曽のお酒かと思われがちですが、蔵元は辰野にあります。

代々、南部流の杜氏が造りを伝承しています。

「どうりで・・・」と思わせる精緻な味と、吟醸香のバランスは、例えば「義侠」や「陸奥八仙」といった「南部流」の杜氏が手掛ける酒と、同じ「味の深み」を感じます。俺にとって、とても好きな酒の1つです。

例の会社の同僚が、桜を観に、山梨県に行くという情報が俺の耳に入りました。そこで俺は、「長野県まで足を伸ばす気はないですか?」と同僚をそそのかし、いつものようにお土産に差し入れてもらいました。

俺の図々しさにも「磨き」が掛かってきました。「図々しさの磨き35」なんて言って、同僚と笑いました。

今回の酒は「夜明け前」の純米大吟醸で、金紋錦という酒米を使っています。昭和31年(だったと思う)、長野県が酒米として開発した米ですね。梨のような甘酸っぱい吟醸香を発生させることのできるのが特徴です。

今回もレアな一献をプレゼントしてくれたものです。

最近、酒のアテとして、食べたいな、と思っていたのが、美味しい練り物です。

というわけで、小田原・鈴廣のチョットだけリッチな蒲鉾を買い、板わさにしました。また、今の時期(`18のゴールデンウィーク)は、暑くなってきて、野菜とともに銘酒をやるにはいい気候です。なので、ほうれん草をお浸しにして、キノコと合わせ、「煮びたし」にしました。

どちらも酒の味を邪魔しない、それでいて酒の味をより際立たせるアテです。

若い果実を思わせる吟醸香と、蒲鉾の旨み、煮びたしの薄味加減、とても合います。精緻な酒だからこそ、「ひっかかり感」がなく、サラリと落ちてゆきます。

美味しかったです。




「磯自慢」をカツオの刺身とともに・・・

あまり醸造地というイメージがなかった静岡県が、その酒造りにおいて質の高さで台頭し、「静岡吟醸」という言葉も生まれたのは、昭和50年代のことでした。

静岡の酒質を高めたのが、「初亀」であり、「開運」であり、そしてこの「磯自慢」であると、俺は思います。

とりわけ、この「磯自慢」・・・現時点では最高水準にあろうとも、決してそれを到達点としない「妥協しない蔵」として、愛飲家の強い支持を得ています。

米は兵庫県産特A山田錦を使う

設備面では超近代的な総ステンレス製の冷温貯蔵庫を完備している

浸水が重要になる洗米はストップウオッチ片手に秒単位で行う

この酒の知名度を推し量り、売ることによって儲けようとする酒販店とは取引をしない

と、その品質向上にかける情熱、酒造りにおける真摯な姿勢は、日本酒ファンでなくとも、知っている人は多いと思います。2008年の洞爺湖サミットで乾杯に使われ、更には2016年のG7シェルパの乾杯酒に使われたことにより、いまや海外でもその名声は轟いております。

例の会社の同僚が「磯自慢の大吟醸」をプレゼントしてくれました。(今回も俺が「ねだった」感じは否定できません)

同僚が過去にくださった酒のうち、一番「格が高い」ことは間違いありません。なんとまあ、ついにここまでの酒を知ったか、という感じの「門前の小僧」です。

こういう「すごい格式の酒」は、おろそかな気分で飲んではいけません。きちんとした状態で、「唎き酒」して、自分が自信をもって「合う」と思えるアテと、味わうことが必要です。

俺はそのアテとして、今が旬の、初夏のカツオを選びました。柵で売っていたカツオを、タタキにはしないで、刺身にしました。理由は、タタキにすると、ポン酢をかけて食べることになります。この酢が、酒の濃密な芳醇さの邪魔になると考えたからです。

包丁を研ぎ、スッスと引いて刺身にしました。しかも刺激が鼻にくるワサビは避け、生姜でいただきました。そして一言

「旨い、旨すぎる」

と驚嘆しました。

洋梨のような吟醸香と特A山田錦の「ホロホロ」っとした旨みが、カツオの味と合い過ぎです。磯自慢は以前から愛飲しておりますが、今回の一献はまさに、まさに「芸術品」だと思います。

果実のような独特の吟醸香、特A山田錦の丸さ、それがカツオとともに、俺の胸倉を掴んで「どうだ」と問いかけてくる感じです。最高に感動しました。

しかも今回、生酒なので、抜栓後、空気に触れることにより、生きた酵母の働きで味わいが変化するはずです。3~4日後には変化が楽しめます。

同僚に深く感謝する次第です。




「松の司」の大吟醸~「精緻な中の酸味」ということ

滋賀県に「松の司」という酒があります。能登流の杜氏さんが造りを担当しています。

この蔵の無加圧で滴り落ちる、いわゆる「あらばしり」は、飲むと泣けるほどの絶品で、あらばしりが出回る1月早々に、「松の司」という名前も正月にふさわしいので、愛飲しております。

もちろん季節物じゃなくても、その造りはきめの細かい精緻な感じのする通好みの一献です。

会社の同僚=門前の小僧 が、激務の中、買い求めて差入れしてくれました。

特A山田錦の磨き35大吟醸です。またしてもいい酒をいただいたものです。

折しも、札幌在住の亮ちゃんという悪友(笑)が、とうきびやら、ジャガイモやら、カニの缶詰など、北海道の物産を送ってくれました。

その中に、いくらがあり、いくらおろしにして、アテにしました。

もう一品はオクラのお浸しです。夏野菜としてのオクラ、おいしいですよね。

同僚から前回いただいた、「磯自慢」と比較して、同じ特A山田錦使用なのに、こちらの方が、やや酸が押してくる感じがするのは、この蔵元が得意とする14号系酵母を使っているためでしょうね。さわやかな酸味で、夏に一服の清涼感を生む味で、それがいくらの薄塩加減、オクラのほろ苦い味と一体となって口の中に広がります。夏には溜まらなくいい味わいの微弱な酸味です。

この蔵は農家と契約して地元・滋賀県でも山田錦を栽培し、酒を造っておりますが、やはり、能登流の技がきちんと伝承されている杜氏さんが造る大吟醸となると、兵庫県の特Aが比類無き味わいを出しますね。

貰い物ばかりで至福の時をしている俺ですが、美味しかったです。




仙禽・雄町をイシモチ塩焼きとともに・・・

戦後間もないころは、心無い、理解していない「闇雲な飲み手」が「栃木、茨城は駄酒の産地」なんて揶揄していたことがあったそうですが、どうしてどうして、栃木や茨城こそ、心を打つ「美味しすぎる酒」があります。

例の会社の同僚が栃木に行くといい、日本酒のアドバイスを求められました。

2種類候補を挙げ、「どちらを買うか?」を俺に聞いてきたのです。

どちらも甲乙つけがたい酒で、好適米を丹念に磨き、高い技術で醸した酒なのです。

俺がその旨を言うと、同僚は「仙禽・雄町の無濾過原酒」を買ってきて飲んだそうです。

「さぞや美味しかったでしょうね」と、若干嫉妬めいた言い方をすると

「実はもう一本ある」と言って、アドバイス料として俺にも味合わせてくれました。とはいえ、俺が「ねだった感」は、今回も否定できません。

仙禽、美味しいですね。この蔵の特徴はなんといっても、酒を仕込む水と、酒の原料となる米を栽培するのに同じ水を使うということですね。

人間以外に「自然に在るもの」・・・土だったり、風だったり、昆虫だったり、そういったものの、「在る」ことが重なって水が澄み、酒は熟するという考え、好きです。

そうして地元で収穫した雄町米を磨き、濾過も割水もしない、火入れは斗瓶に囲うタイミングで早期にする・・・そうして作った酒を世に出します。

雄町米独特の酸味が、かすかな発泡と相まって、フレッシュな味わいであると同時に、喉を通過する時の「引っ掛かり」のない、それでいて喉奥を押し広げるような「押し」があります。熟したマスカットのような印象です。

イシモチの塩焼きと合わせました。イシモチのウロコを取り、ワタを出して塩焼きにしました。

どうしてこの魚にしたのか、というと、レモンを絞って添えなくても、イシモチは臭みがないからです。

レモンの酸っぱさで、雄町米特有の酸味が邪魔されることを避けたかったからです。

酒のラベルを見て、アテを決める・・・大切なことです。

仙禽には“モダン”と“クラシック”があります。ラベルを見ればすぐにわかります。どちらも美味しいのですが、今回は“クラシック”で、しっかりした味わいでした。

同僚に感謝です。




仙禽・無垢

会社の同僚が栃木県にドライブに行き、お土産に「仙禽・無垢」という評判の美酒を差入れしてくれました。

いまや「生酛はクラッシク・速醸酛はモダン」と名称にも差異を設けている蔵元ですが、俺が速醸の方がはるかに好みなことを考慮してくれて、速醸のこの酒にしたと言います。

この美酒を味わうと同時に、「生酛と速醸はどう違うか?」という、まさか会社の同僚の口から出るとは思わなかった質問に答えたいと思います。そうした「高度な質問を」するほど、同僚の日本酒レベルは上がっているのだと思います。



生酛と速醸の違い・・・日本酒醸造の根幹になる酒母の造りに関する技術で、そのテーマで本が一冊書けるほどのことなので、奥が深いのですが、くだくだしい説明じゃなく、簡潔に「嗜み程度」に知っていて欲しいことを解説します。

酒母とは酒の元になるもの、洗って磨いた米に酵母菌が付いて、仕込み水を加えた状態ですね。大原則として、この酒母は酸性でなくてはなりません。

1つは発酵のための酵母が繁殖するため。

それともう1つが、酒の仕上がりの邪魔になる雑菌の繁殖を抑えるためです。

この状態を作るために必要になるのが「乳酸」です。



生酛では乳酸を得るために乳酸菌を使います。乳酸菌が活動しやすい温度に保ち、その活動で放出される乳酸で、雑菌の繫殖を防いでおりました。ぬか漬けが夏の方が早く漬かる・・あの原理です。

しかしこの方法は、酒母の管理が煩雑なうえ、乳酸菌の活動しやすい温度に上げるため、酒母に余計な菌が繁殖してしまう、なんてこともありました。

こうした事態を回避するためには熟達した知識が必要で、工程日数もかかります。

そうした難点を改良したのが「速醸酛」で、近代になって、たしか、明治の終わりころには行われていたと習った記憶があります。

乳酸を得るのに乳酸菌を使わず、仕込み水を加える際に、化学物質である乳酸を添加する方法です。

乳酸菌が乳酸を生成するのにかかる時間である約2週間を短縮できる上、雑菌に汚染されない完璧な状態が維持できます。

今や速醸が主流で、生酛は「昔のやり方」になっています。そうした意味合いで、仙禽は「生酛はクラッシク」、「速醸酛はモダン」と呼んでいるのだと思っています。



この「無垢」・・・地元産・山田錦を使用しています。

特A山田錦じゃないことを同僚は気にかけておりましたが、いやいや~ホロホロ感のある重厚な推しですね。

グラスに注いだ時に立つ香り、フルーティーに喉に落ちていく感覚、美味しいですね。

馴染みの魚屋さんで、網ではなく、釣ったアジを買い求め、捌いて刺し身にしました。

何日か前から食べたかった焼鳥も地元で有名な人気店でテイクアウトしました。

プラス「三つ葉と笹かまぼこの和え物」です。酒ともども美味しかったです。

同僚に感謝します。




「山桜桃」で癒される休日

山桜桃、と書いて「ゆすら」と読む酒があります。茨城・友部にある「須藤本家」という蔵元から出ております。

例の会社の同僚に話したら、興味を示し、近くまで行く用事があるので、行ってくるとおっしゃって、買ってきて差入れしてくれました。

現当主が、確か、55代目に当たる日本でも最古の蔵元です。(54代目だったかもしれません。ただ、確か、50代は過ぎてると思います)

「郷乃誉」という酒を造っている蔵なのですが、そのうちの特定品目に山桜桃の名称を使っています。

今回、いただいたのは、この山桜桃の無濾過生の純米大吟醸です。地元産・亀の尾系好適米を40磨きこんだ一献です。

飲み始めは重厚感のある、ガチっとした大吟醸なのですが、グラスに注いで時間が経過すると、みるみるうちに香味が立って行きます。

まるで手品のように、空気に触れると、短時間で味が変化していき、飲み初めには感じなかった濃醇な「フルーティーさ」が漂います。

会社の同僚は、俺の進める酒をワイングラスで、くゆらせながら飲むといっておりましたが、この酒はまさにその飲み方がいいと思います。

アテを見繕いに出かける前にテイスティングしたのですが、俺もワイングラスで飲んでみることにしました。

短い時間で押し寄せる軽快な吟醸香を楽しむために、淡白な味わいのはんぺんを買い、網焼きにしました。もう一品は本鮪の中落です。

俺はワインをあまり口にしないので、景品のようなグラスしかありませんが、愛用の日本酒グラスより、空気に触れる面積が広いので、立ち上がりが良く、注いでから、一杯を飲み干す間に立ち上がってくる香りを楽しむことができました。

はんぺん・中落というチョイスも間違ってなかったと、俺的には思います。

重厚感の「押し」の後に、軽快な「芳醇」が来る・・・いやいやいい酒です。

最近、疲れ気味だったのですか、美味しい酒に癒されて回復しました。疲れが吹っ飛ぶ旨さでした。いい休日になります。

今回も同僚に感謝です。




山桜桃 again

例の会社の同僚から今年も頂きました。近くまで出掛けた際のお土産だそうです。

ただ、今回も俺が「ねだった」感じは否定できません。

自宅ジムで汗を流し、家事もソツなくこなし、仕事に役立つ勉強もして、さっぱり入浴した状態で、癒す感覚で味わいます。

相変わらず軽快な爽快感と、濃醇なフルーティーさには感服します。20BY、さすが搾ったばかりの生の大吟醸です。風格というものを感じます。

折しも、数日前に鳥取県の靴職人さんが、高級魚「のどぐろ」を使ったさつま揚げを送ってくださいました。焼いてアテにしました。(ロングさん、美味しかったよ~)

あとは、いつもお世話になっている魚屋さんで勧められた「本鮪の中トロ」です。

程よい脂のノリが酒質の芳醇な味わいと絶妙なマッチ具合です。

もう一品、水菜のお浸しを作りました。酒の味わいを邪魔しないように、昆布で出汁を取り、そこへ白醤油を合わせ、お浸しに掛けます。

どのアテも酒に沿うように味に伴い、疲れを一掃してくれる酔い心地でした。

同僚に感謝します。

水菜のお浸しにした際の、根の部分は、味噌汁の具にして無駄なくいただきました。




鳳凰美田 Black Phoenix

鳳凰美田・・・ツウ好みの美味しい酒ですよね。

この蔵の酒の美味しさは、手仕事でないとできない作りにあると、俺は考えます。

「しずく搾り」という製法で酒を造るのですが、その工程は機械化などとは真逆の、蔵人の手による丹精込めた手作業によって、芳醇でインパクトのある酒ができます。

この蔵の最高の酒は「フェニックス」と名付けられた大吟醸なのですが、それは酒名の「鳳凰」を表しています。

今回、会社の同僚が栃木に出かけて、買い求めて差入れしてくれたのは、「ブラックフェニックス」といい、愛山使用の、磨き55、純米吟醸です。

「なんとまぁ、こんな人気のある酒、俺の分と、自分の分と、よく2本も手に入ったものだ」

と思います。

ただでさえ愛山は人気のある酒米、それの鳳凰美田となると、欲しがる人は多いはずです。

ギンダラの西京焼きとともにいただきました。

もう一つのアテは地元で有名な「鳥一」という店の焼き鳥です。テイクアウトしてきましたが、トースターで温めると出来立てと変わらぬ味です。

酒を口に含んでビックリしました。美味しすぎます。

愛山の特徴である酸味のフルーティーさと、しずく搾りならではの透明感ある酒質が、ガーンと押してきます。果物のマンゴーの味にあるような新鮮味のある甘酸っぱい感覚と、米由来の旨みが、静かに突き上げるように湧いてきます。

鳳凰美田はかなり以前から愛飲しており、何年か前には会社の納会にも提供したことがあるのですが、ブラックフェニックスの愛山がここまで美味しいとは驚きました。

酒名の通り、「羽ばたく」感じで、堂々とした「味わいの風格」と表現したくなります。

アテとの相性も良く、いい時間を過ごすことができました。会社の同僚に感謝です。




鳳凰美田 GOLD Phoenix

GOLD PHOENIX・・・酒米に愛山を使い、45まで磨き込みます。小林酒造特有の「雫搾り」という方法で吊るし、滴った原酒を1年間氷温貯蔵します。

俺の記憶が正しければ、蔵出しされるのは年に2度のみな筈です。

イタリア産モンティエロッサ製のシャンパンボトルを使っているのも、高貴な品格を感じます。

貯蔵した生酒を手詰めで瓶に生詰めしてから温水で加熱する方法を採用しておりますね。いわゆる「瓶燗火入」です。

その目的は、海外を意識し、輸出に耐えられるように、繊細な味わいを保つためと言われています。シャンパンボトルを採用しているのも、外見へのこだわりだけじゃなく、国際規格である750mlで流通させるためです。

この「すごい酒」を例の会社の同僚が差入れしてくれました。

なんとまあ、年2回しか出ない、その上人気があり、奪い合い状態の酒、よく手にできたと感心します。

気晴らしによく訪れる栃木の、ある地酒専門店があり、そこは栃木酒の品ぞろえはすごいということです。

しかも俺の好みを理解してくれていて、「愛山使用がいいだろうな」と判断して選んだといいます。何とも思いやりを感じます。



 こういう「すごいランクの酒」には、やはりいい刺身です。

というわけで、いつもお世話になっている魚屋さんで「カサゴ」を買いました。

カサゴは俺のレベルでは「難しい魚」であり、捌けないので、魚屋さんのスタッフに捌いてもらい刺身に引いてもらいました。

カサゴは少々値が張る高級魚ですが、酒の格式からいって、このくらいの魚じゃないと、不遜になると考え、思い切って買いました。身の締まったプリっとした食感、淡白な白身である中にも脂が乗っている味わいの刺身になります。

酒の質感は透明な中に、ローストしたアーモンドのような「甘みとビター」が推してきます。いやいや~ビックリするほど美味しいですね。

久しぶりに飲みましたが、「こんなに美味しかったっけ?」と驚きました。

東京Xをシンプルに塩で焼いた「豚肉塩焼き」や、これから時期を迎える白菜の漬物とも相性よかったです。

まさに「文句のつけようがない酒」 感動しました。

会社の同僚に深く感謝する次第です。




東洋美人・特吟・愛山

東洋美人を醸す澄川杜氏は、十四代の醸造元である高木酒造で修業された方です。「どうりで」と思うくらい愛山の使い方に通じるものを見出すことができます。

かつて、俺が現役の日本酒ソムリエだった頃、「十四代・特吟・愛山」という卓越した酒がありました。その造りを継承したのが、この「東洋美人・特吟・愛山」で、今回、会社の同僚がプレゼントしてくれました。

ラベルのデザインもロゴも、十四代のそれと全く同じですね。ただ、革製の袋に入っているのにはその凝った演出に驚きました。

心白米の代表格である愛山を40磨くことで、中心部のデンプン質が露呈し、酵母がその大きなデンプン質を侵食することで、酒は雑味の無い、スッキリした旨みを湛えて仕上がります。

全幅の信用を置いている地元の魚屋に行き、アテをみつくろいました。いまが旬のヒラメを柵で買い、自分で引いて刺身にしました。

もう一品は「ゴボウとコンニャクの含め煮」です。

愛山を贅沢に磨いた酒質は酒名の通り、眉目秀麗の美女の優美さを感じるようなデキです。

甘みと、それに沿うように伴う独特の酸味が口からはじまり、鼻孔、喉へと広がります。まさにエレガントな一献です。それが、冬の海で身が締まったヒラメと合います。ヒラメは少々値が張る魚ですが、選んでよかったと思います。

こういう「すご過ぎる酒」には、このくらいのアテがいいと、俺は思います。「ゴボウとコンニャクの含め煮」も、酒の味わいを邪魔しないように、薄味加減に炊きました。

おいしい酒に酔いしれて疲れが取れた晩餐でした。




村祐・和

新潟市内に「村祐」という酒があります。創業は戦後という新しい蔵元です。

伝統的な酒造技術が伝承されることの多い新潟酒において、大学で醸造学を修めた蔵元の跡取りが、今までのオーソドックスな酒造法にとらわれない、新しい酒質を開拓したと言えると思います。

ややもすると、端麗に偏りがちな新潟酒において、果実のような独特な甘み、淡麗とは真逆な、芳醇な味わいは、新潟醸造界に新風を吹き込んだと言えます。

生産石高も少ないので、なかなか流通しない貴重な一献です。

例の会社の同僚が、リフレッシュのため、新潟の温泉に浸かりに行くという情報が俺の耳に入りました。

「ならば、お土産は村祐にしてね」

と、図々しくも、俺は言いました。「ねだった感じは否定できない」と言っているオイラですが、今回はあきらかに「ねだり」ました。

そうした「無茶なリクエスト」にきちんと答えてくれて、同僚は「村祐・和」という、最近の村祐のスタンダードになってきた酒を差入れしてくださいました。

地元産の好適米を低温でゆっくり発酵させ、サッと軽く濾過し、一度だけ火入れして、生貯蔵するという製法で造られた一献ですね。

村祐と言えば、この「和」(なごみ)が支持されているくらい、ファンの多い酒です。

アル添、つまり醸造アルコールを加えているので、どっしりとした重厚感のある味わいかと思っておりましたが、軽快で、さらっと入っていく感じの旨口酒です。

アテを見繕いに行く前に利いてみたのですが、このさらっと感と独特な甘みは、味のしっかりした料理と合わせると美味しいと感じました。

というわけで、厚揚げ焼とスモークサーモンです。

どちらも軽快な酒質とマッチして、酒をより一層美味しく引き立ててくれました。

特にサーモンとの組み合わせ、サーモンのねっとりした味わいと、酒の上品な甘みが、とても相性が良かったです。

今回も同僚に感謝です。




栄光富士・純米大吟醸 愛山

山形県鶴岡市に蔵元は、あります。江戸時代から酒造りが盛んな大山地区の一角にあり、この蔵も江戸時代から続きます。

老舗酒蔵として、日本酒ファンの間では名を知られ、街道筋に威風と風格さえ湛えて、蔵はあります。

「古酒屋」という自虐的な自称を好んで用い、「古酒屋のひとりよがり」という名の大吟醸など、決して「ひとりよがり」ではなく、多くのファンから熱く支持されている美酒を造り続けております。山形県という、比較的寒冷な土地であるため、10号酵母、その流れを汲む山形酵母で、美山錦や出羽燦燦といった好適米を醸し、柔らかい口当たりの、甘めで軽い当たりの酒を送り出してきました。

今回、例の会社の同僚が、この栄光富士のうちの愛山使用の純米大吟醸をプレゼントしてくださいました。しかも、無濾過生原酒で、磨き50です。限られた時期にだけ出る限定品です。

「なんとまあ、よく手に入れたな・・」と、門前の小僧から、日本酒サポーターに変貌したことに少なからず驚きます。

愛山、最近はとても人気がありますね。腕に覚えのある蔵元が競って愛山使用の吟醸酒を世に問うています。

伝統的な造りが確立されているこの蔵が、愛山を使って、いわば、それまでの殻を打ち破るような酒を造るとどうなるのだろうと期待して、アテを見繕いに行く前に唎酒してみました。

いやいや、驚きました。甘みと酸味が調和して、決して軽い口当たりではなく、どっしりとした濃醇な味わいがきます。卓越した出来栄えです。

しかも愛山独特のフルーティーな旨みが吟醸香を伴って広がります。

こういうしっかりした味の大吟醸には刺身がいいと思い、信用を置いている魚屋さんで鯛の柵取りした切り身を買い、自分で引いて刺身にしました。もう一品は、アスパラの素揚げです。赤穂の塩を振りいただきます。

酒の芳醇な広がりと、鯛の淡白な味わいが絶妙です。驚くほど美味しいです。

以前、この同僚から、「東洋美人・特吟・愛山」を送られた時に、ヒラメの刺身で味わいましたが、やはり、こういう格式のすごい酒は、鮮度のいい魚を生で合わせるのが最高ですね。

殊にこの一献、最初、冷蔵庫で冷えた状態のまま、口に含んだ時は、ガシッとした感じがするのですが、グラスの中で温度が常温に近づき、空気に触れると、たちどころにフルーティーさが立ち上がってきます。その時点で鯛の刺身を口に入れました。この取り合わせ、至福の味わいです。同僚に深く感謝する次第です。

抜栓から1週間後、味わってみました。

果物が時間とともに熟していくように、フルーティーさが増して、芳醇な味わいが濃くなりました。

お手製の和風ローストチキン、茄子の煮びたしとともに楽しみました。

生原酒ゆえ、時間の経過とともに、瓶の中で味が変化していき、濃さが増すというのがいいですね。

アテとして選んだ茄子が美味しい・・・もう夏ですね。




鳳凰美田 別誂至高

会社の同僚は、よく栃木県に出かけます。

最近は「仙禽」の速醸がいいと、自分の「ひいきの蔵」を見つけたようで、「速醸と生もとは、どう違うの?」なんて、よもや同僚から出ると想像もしていなかった質問で、俺を驚かせております。(ちなみに「速醸」と「生もと」は、どう違うか、は、「天狗舞」か「三井の寿」を例に近いうちに説明します)

俺にもお土産に栃木酒をプレゼントして下さるそうなので、「仙禽」も確かにいいのですが、俺は「鳳凰美田・別誂至高」という、何ともエクセレントな、芳醇な味わいの酒を「ねだって」しまいました。

どんな酒かと言うと・・・

兵庫県産特A山田錦を35磨き、醸造アルコールを加えます。モロミの状態を1か月、低温で保ち発酵させます。

モロミを搾る際に、「しずく搾り」という、分かりやすく言うとボクシングのサンドバッグのように吊るし、滴り落ちて来る酒を斗瓶に取ります。

この斗瓶で熟成した後、1本ずつ丁寧に瓶に「生詰」するのです。まさに「酒造技術の粋意を尽くした」一献です。手が込んでいます。

こういう「すごい格式の銘酒」はやはり、ジムなどで汗を流した後で、凝ったアテともに味わいたいものです。

というわけで、今回選んだのが、「つぼ鯛の一夜干し」と「手作りおでん」です。

つぼ鯛は魚としては、値が張る部類に入りますが、こういうすごい酒を頂くにはこのくらいのアテじゃないと、と思い、地元でお世話になっている魚屋さんに取り寄せてもらいました。

前日に昆布ダシと白醤油で、煮汁を作り、今日、ジムから帰ってコトコトとおでんを煮ました。酒を口の中に流し込み、その味わいに驚きました。

特A山田錦特有の「ふくみ」「ふくらみ」、製法に由来するフルーティーな仕上がり・・・

それが口の中と鼻孔空間に広がるのです。いつものことながら、特A山田錦のすごさを痛感させられます。

つぼ鯛の薄塩加減、おでんのダシの味と相乗効果を起こして、俺を感動へと駆り立てます。本当にすごい酒です。人気商品で「早い者勝ち」状態なのが頷けます。

鳳凰美田はかれこれ20年以上愛飲しておりますが、その中でも「別格」な一献です。

最近、仕事に追われて疲れ気味だったのですが、すごい酒で疲れも吹っ飛びました。

同僚に感謝する次第です。

ちなみに鳳凰美田の愛山使用の大吟醸を「ゴールドフェニックス」と言います。疲れたら癒される感覚で飲みたいものです。←おねだり・笑




北雪・本醸造~端麗な中の「押し」

例の会社の同僚が、辛口系日本酒を燗を付けて飲むのが好きな友人に送るということで、北雪の本醸造を選んだと言います。

俺の分もあるというので、たまにはフルーティ―じゃない、辛口のいわゆる「男酒」をガツンとやるのもいいと思い、遠慮なくいただきました。

北雪の下の方といえば、淡麗で、余韻の無い、辛さが際立つ一献と思いきや、確かに淡麗で、磨いてある酒に比べて、吟醸香はないのですが、喉越しというか、押してくる強さはしっかりしているのです。

刺身とか、焼き魚といったアテじゃなく、煮込み料理と味わったら、ほっこりするだろうな、と思い、チキンのトマト煮込みを作り、飲みました。


おでんやモツの煮込みと合わせたい一献ですが、今回敢えて洋風の煮込み料理にしてみました。

トマトソースの軽快な酸味と、酒のドライ感がマッチします。こうした押してくる酒と、洋風料理って、意外にも合うんですね。

久しぶりに本醸造淡麗系を飲みましたが、いいものですね。

アテのもう一品は「菜の花のお浸し」です。季節を先取りした感じです。




〆張鶴 純米吟醸・山田錦

〆張鶴・・・新潟酒を代表する淡麗系の美酒ですね。

俺が駆け出しの日本酒ソムリエだった頃は、この蔵元である宮尾酒造が山田錦を使うなんて無かったことなのですが、今では定番商品として、通年出回っております。

例の会社の同僚が新潟県へ保養に出かけたお土産に差入れしてくださいました。

〆張鶴の純米吟醸と言えば、五百万石を磨いて造った「純」が知られていますが、兵庫県産山田錦を50%磨いて造ったこの純米吟醸酒の方が、格上だと、俺は思います。

それはやはり、山田錦の持つ膨らみは、五百万石の淡麗さには無い「味の丸さ」を備えていることではないでしょうか。

新潟酒は往々にして淡麗系の傾向があり、この〆張鶴にも、そう言う印象があるのですが、山田錦を50磨いて造ったこのパターンは、それとは違い、ツンとした味わいをいたづらに追うことなく、味のふくらみや、咽喉を通過する時の「丸い広がり」を持たせた一献に仕上がっております。

アテとして、カジキマグロの照り焼きを作って合わせてみました。もう一品はスナップエンドウをシンプルにゆがいて、マヨネーズで食べます。

この蔵元が目指すのは「料理と共に味わえる酒造り」ですが、山田錦を熟達の酒造技術で醸した酒は、カジキの焼き物の味わいに沿うように、丸い「ホロホロ感」を俺に届けてくれました。

美味しく癒されました。

同僚に感謝する次第です。




鶴齢・純米吟醸・愛山

鶴齢(かくれい)という酒があります。

蔵元である青木酒造は日本有数の豪雪地帯である新潟県魚沼地区にあり、江戸中期より、脈々と越後流伝統の淡麗系の酒を作っています。

ただこの蔵が醸す酒はけして辛口に偏ることなく芳醇な旨みを湛ているのです。

俺はよく

食べて美味しい米と、日本酒を造る米は違い、コシヒカリやササニシキで酒を造っても、旨い酒はできません。だからいわゆる「米どころ」イコール酒も旨いというのは素人感覚だ

といってきました。



この鶴齢も、魚沼という美味しい米の産地にありながら、けしてコシヒカリで酒を造っているわけじゃなく、酒造好適米を使って、新潟酒の定型に填まらないような芳醇系の美酒を造っております。

例の会社の同僚が、保養を兼ねて新潟へ遊びに行って、そのお土産に鶴齢の純米吟醸をプレゼントしてくれるといいます。

「山田錦と愛山、どちらがいいですか?」

と聞かれたので、俺は愛山をリクエストしました。

「ってか、鶴齢に愛山なんて、あったっけ?」

というのが俺の第一の感想です。ここ数年のBYから、愛山を使っているようですね。

しかも敢えて「東条産」と断ってあります。東条と言えば、特A地区、特に優良な好適米を産出するエリアですね。

その愛山を57%磨き、安定した温度管理ができ、酒を普通以上に円熟させることができる「雪室」という設備の中で貯蔵して出荷しているのです。今までの新潟酒には無かった造りです。凝っております。

テイスティングしてみたのですが、辛めの傾向にありながら、愛山特有のフルーツの熟した味わいが押してくるのです。

こういうやや辛めでありながら、芳醇も併せ持つ酒、いいですね。

サーモンを柵で買い、自分で引いて刺身にしました。

枝豆を擦り流して豆乳で固め「枝豆豆腐」も造りました。

更には肉料理とも合わせたかったので、地元で有名な焼き鳥屋さんでテイクアウトした焼き鳥もアテにしました。

愛山の持つフルーティーな味わいが雪室で熟した旨さとマッチして、多幸感をもたらしてくれました。疲れが取れる幸せな酒酔いでした。

同僚に感謝する次第です。




鶴齢・大吟醸 「牧之」

地元・新潟の好適米を40まで磨き込んだ純米大吟醸がありますが、その上を行くのが、年一回、晩秋に限定品として出回るこの大吟醸「牧之」です。

新潟に保養に行った会社の同僚が、豪雪で立ち往生する車も出る中、めげずに持ち帰り、差し入れしてくれました。

兵庫県産特A山田錦極上米を37まで磨き込み雪室で生貯蔵した傑作品ですね。鶴齢の名付け親である人の名前を酒名に冠するほど、この一献には造り手の篤い思いが籠っています。

熟した果実のような吟醸香と、それに伴うフルーティーで濃醇な飲み口は、まさに驚嘆です。

正月2日に飲んだのですが、酒の芳醇なホロホロ感を損なわないような素材を選び、アテにして、新春風に重箱に詰めてみました。

ホタテの貝柱の刺身、ボイル海老、焼きナス、玉子焼き、笹かまぼこ、鶏ささみの燻製です。

酒好きな相棒と一緒に杯をあおったのですが、相棒もその見事な出来栄えに「こんな酒が造れるんだぁ」としみじみと味わっておりました。

同僚に感謝です。




天狗舞・純米大吟醸を金目鯛干物とともに・・・

数々の地方銘酒の存在が知られ、日本酒が、その製法や使用米はもちろんのこと、杜氏にも流派があり、流派ごとに受け継がれる技があることが広く世に知られ、日本酒ブームが起きたのは昭和50年代後半のことでした。

能登流の杜氏が「山廃」仕込みで醸す酒は、そのブームの牽引役でした。

「山廃」というのは、いつか同僚に説明した「生酛」の一種と認識ください。

「天狗舞」と言えば、この「山廃」仕込みが有名ですが、むしろ「速醸」にこそ、受け継がれる技が生きていると、俺は思います。

能登流四天王と謳われた中三郎杜氏からずっと途絶えることなく伝えられる酒造技術・・・それは速醸酛にも十分生きております。

会社の同僚が石川県に旅行して、お土産に天狗舞・純米大吟醸をプレゼントしてくれました。

好適米を50磨く、火入れを2回する、濾過する・・・典型に沿った「オーソドックスな大吟醸」です。

バランスの良さと、かすかに添えられてある酸味の控え目な「推し」・・・好きな味わいです。

シンプルな「いじってない」大吟醸なので、シンプルな魚料理と合わせることにして、いつもの魚屋さんに出かけました。

そこで見つけたのが「金目鯛の干物」です。

「薄塩加減が絶妙で大吟醸に会うこと間違いなし」

と女性店長が太鼓判を押すので、少々髙かったのですが、アテに買いました。

女性店長が進める「キハダマグロ」の赤身も買い求めました。

金目鯛の干物、さすがに猛プッシュするだけあって、天狗舞大吟醸のエレガントなふくよかさに合い、すごくおいしかったです。

キハダマグロ、ブロッコリーとだし巻き卵の焼浸しともども、オーソドックスな大吟醸に合い、猛暑日が続いたことから来る夏の疲れを癒してくれました。

本当に美味しかったです。同僚に感謝します。




羽根屋~純米大吟醸・愛山

仕事が立て込んで、忙しい時、会社の同僚は「酒でも飲まなきゃやってられない」といいますが、俺もその意見に大いに賛成です。

忙しくしていても、そのことに対する「癒し」になるような一献があると、いい張り合いが持てます。

リモート会議で使うような伝達ソフトに「愛山」と書き込んで同僚に送ったら、「愛山使用の酒、飲みたいですか?」と返事をくれました。

以前、「風の森・愛山」を差入れしてくれた同僚ですが、人気が出てしまい、「風の森」は愛山に限らず、いま(2023年初夏)、品薄状態が続いております。一時のブームと思いますが、「噂になっているから試しに飲んでおこう」的な、ミーハーな酒飲みが多いと、本当に日本酒を愛飲している酒徒が迷惑しますね。

会社の同僚のルートでも、俺独自のルートでもダメで、「別ルートを開拓しなきゃね」なんて、仕事の合間に同僚と話しておりました。



「風の森じゃないけど・・・愛山です」

そう言って同僚が差入れしてくれた酒を見て、俺は仰天してしまいました。

「羽根屋」という富山県のすご~い美酒の愛山使用の純米大吟醸なのです。なんとまぁ、愛山使用の酒と言っただけで、すごい酒をくれたものです。

もともと富山県は北アルプスや立山連峰の「雪解け水」で仕込むため、水の良さには定評があり、「羽根屋」はかなり以前から注目していました。

蔵元である「富美菊酒造」の、けして「手を抜かない造り」はどんな規格であろうが、大吟醸を醸す時の「こだわりの作り」で臨みます。

海外の権威のあるアルコール飲料セレクションで、幾多の受賞歴があるのも頷けます。

その蔵が兵庫県産愛山を50磨いて造った純米大吟醸の生です。

さっそく、いつもの魚屋さんに飛んで行きました。いつも良くしてもらっている女性店長に聞くと、「今日はカツオかアジがおすすめ」と言うので、おおぶりのアジを買い、タタキにしました。

以前、横田基地に遊びに行った時の「大多摩ハム」の「東京Xの熟成肉」と地元で有名な豆腐屋さんの「おぼろ豆腐」も添えてアテにしました。

そして、酒をゴクリ・・・「旨すぎ」です。

愛山のクリスタルでさえあるフルーティーさ、奥行きのある余韻、見事です。

「羽根屋」は下の方でも十分美味しいですけど、初めて飲む(以前飲んだことがあるかもしれません、たぶん初めて)愛山使用の大吟醸が、こんな、喉に落ちてから、フルーティーさがキレイに広がるなんて、驚きと感動を得ました。

揃えたアテも酒質に沿い、際立たせてくれました。

「いい酒って、疲れを一掃してくれる、いいものだな」と思った一献です。

会社の同僚に深く感謝申し上げます。




風の森・・「みんなで花火を打ち上げるお酒」

蔵元主催の「大花火大会」を毎年夏に開催していますね、油長酒造。

その花火大会も今年で終わることとなり、花火大会開催の協賛という形で醸造されていた「みんなで花火を打ち上げるお酒」も惜しまれつつ終売となってしまい、「このネーミングでは」今年最後となってしまいます。

ですが、「THE FINAL」ということで例年1種類だけでしたが、今年度のみ2種類発売されます。

愛山の60磨き、ネーミングの妙、ラベルのあでやかさと相まって人気が出てしまい、どこの地酒専門店でも「おひとり様、N本まで」という売り方であり、「買えたらでいいや」というスタンスで臨んだ俺は、結局買う機会を逃してしまいました。

そこへすかさず、会社の同僚が押さえて差入れしてくださいました。何でも、風の森に関する新たなルートを開拓したそうです。

実にタイムリーな差入れです。

貝の刺身と合わせようと思い、いつもの魚屋さんに行くと、帆立貝の貝柱が並んでありました。買ってアテにしました。

連日、猛暑日が続くような暑い気候のなか、「冷やし鉢」もいいなと思い、コンソメ味の洋風出汁に寒天を入れ、そこにトマト、ブロッコリー、ゆで卵を入れて、冷やし固めた「コンソメ味のゼリー寄せ」も合わせてみました。

もう一品は東京のブランド豚「東京X」のタレ焼きです。

愛山を60磨いた果実香のある味わい、クリスタルな透明感のある広がりと相性良かったです。

本当に暑い日だったので、冷し鉢との組み合わせ、最高でした。

暑さから来る疲れも吹き飛びました。

同僚に深く感謝いたします。




五郎八をモツの煮込みとともに

五郎八・・・その存在を語ってから、会社の同僚が、毎年、初冬に、ねだらなくてもごく自然に差入れしてくれます。

同僚も気に入ったみたいで、「麻婆豆腐をアテに楽しんだ」なんて言っておりました。

 確かに、大吟醸とかとは正反対の「ガツンとくる」酒なので、そう言うアテもいいと思います。

 俺は、というと、やはり日本酒なので、和のテイストの「和え物」や「鍋物」がいいです。煮て作る料理と合わせたいです。

濾していないモロミが白濁し、独自の「甘酸っぱさ」を広げる推しは、刺身とかじゃなく、郷土的な煮物とかと合わせたいです。

というわけで今年は「モツの煮込み」で味わいました。

モツは下処理としてゆがく時、すごい悪臭がしてしまうので、近所迷惑にならないように、馴染みの居酒屋さんで、ゆがいたのを売ってもらいました。

これを生姜、ニンニク、白味噌で煮ます。各家庭、各料理屋ごとに「そこの味」がありますね。

 自分で言うのもナンですが、よくできたと思います。

折しも北海道に住む、仲良くしている 亮ちゃん が、「真ホッケの開き」を送ってくれました。

焼いてアテにしたのですが、これもまた、濁った酒にはうってつけでした。

五郎八のようなインパクトの強い酒には、煮物とか焼き魚がいいなぁ、と思った酔い心地でした。




「作」の純米酒を生ウニとともに・・・

三重県・鈴鹿に「作」(ざく)という銘酒があります。

元々「鈴鹿川」という銘柄の酒を作っていたのですが、蔵元の審査に通った「篤い思い」のある地酒専門店にのみ限定販売して流通させているのが、この「作」です。

 造り手である能登流・内山杜氏は醸造学を学び「酵母と発酵の関係性」の知識を造りに取り入れている方です。

蔵元である清水清三郎商店は『四季醸造』であることで有名ですね。

普通、日本酒は「寒造り」・・・つまり、冬の寒い期間に造りますが、この蔵元は冷蔵貯蔵等の設備を充実させ、通年、酒造りを行っております。



「作」はSAKE COMPETITION、SAKE SELLECTIONやKURA MASTER、THE JOY OF SAKE、インターナショナルワインチャレンジなど、数々のコンペティションで受賞し、その名声がとどろくと、それを聞いた航空会社が機内酒に採用しました。2016年に三重県志摩市で開催された伊勢志摩サミットでも乾杯酒という大役を果たしました。



なかなか入手できない一献ですが、手に入りました。磨き60の純米酒です。

絶好のタイミングでノアくんから「実家からウニが届いたから来て」とLINEが来ました。

さっそく「作」を持って行きます。「ワイングラスで飲むことが映える酒」として、入選したことをノアくんも知っているあたりが流石です、きちんとワイングラスを用意しておいてくれました。

三陸直送の生ウニを、お皿に「こんもり」盛って出してくれました。

ウニの濃厚なクリーミーさと、酒の、少しだけ酸の効いた辛めのスッキリ感が合い過ぎです。

日本の食文化って、いいですね。




十四代・本丸

平成の初め頃、突如現れたかと思うと、あれよあれよという間に超人気銘柄に育った十四代・・・強くて人気がある巨人軍に「アンチ巨人」がいるように、十四代を「騒ぐほどじゃない」なんて、嘯く人もいますね。

俺は、というと、その美味しさ、素直に好きです。

「今年はダメだろう」なんて揶揄され続けながらも、毎年旨い酒を提供している姿勢には感服しております。

淡麗辛口という、それまでの日本酒の概念を覆し、芳醇旨口という方向性を醸造界にもたらした功績は大きいです。

「愛山」「龍のおとし子」「酒未来」など、米の個性に光を当てる造りも、受け入れられる要素として、新鮮でした。

蔵元代表であり、杜氏である高木顕統氏は東京農大で醸造学を学んだ方で、杜氏の流派ごとに受け継がれる酒造りとは違い、本格的な「科学の眼」を取り入れた方です。

俺は思うのですが、「愛山」や「雄町」を使った「中取り純米吟醸」系じゃなくても、「五百万石」使用の「本丸」で十分美味しいですね。いわゆる「十四代の下の方」でも、その美味しさに満足できます。

会社の帰りに、馴染みの店で本丸を一献、味わいました。

十四代は個人で購入し、自宅で味わうのは困難ですね。やはり扱っている飲み屋で合うアテとともに一杯やる感覚がいいですね。

牡蠣と味わったのですが、マッチして美味しかったです。




日本酒商売の「儲け」について

もう、何年か前の話になりますが、友達と吉祥寺の居酒屋に飲みに行った時、「獺祭 1,000円」という張り紙がしてあるのを見ました。

俺はフロアスタッフを呼び止めて、「これは獺祭の何ですか?」と聞きました。

学生のアルバイトと思しきスタッフは、俺の質問に要領を得ず、「店長を呼びます」と答えます。やがて現れた店長に同じことを聞きましたが、やはり意味が分かってない感じで、キョトンとしています。

俺は自分の知識をひけらかす気など、毛頭ないのですが、獺祭の磨きによっては、一杯1,000円は、高くもあり、安くもあると思ったのです。

つまり、どういうことかというと、獺祭の39なら、1,000円は安いし、45磨きなら1,000円は高いと思ったのです。

店長は瓶を持ってきて見せてくれました。磨き39だったので、「安いなぁ、どういう値段のつけ方をしているのだろう?」と思うと同時に、獺祭に限らず、酒には「磨きいくつ」というものがあって、それによって値段が異なることを知らない店長を怪訝に感じました。おそらく「雇われ店長」で、数字を挙げることが何よりの職責なのでしょう。



日本酒を一升瓶で買い、杯売りする時の売値を決めるのって、案外難しいですよね。貴重な、レアな美味しい酒が手に入った時、あまり高く売値を設定すると、飲んでもらえないし、かといって、儲けが出るようにしないと、商売として成り立たない。

俺が日本酒ソムリエとして働いていた時に、経営者から与えられた数字は、

「原価率28%で、やってくれ」

というものでした。

どういうことかというと、一升2,800円の日本酒があったとします。これを1合ずつ売ると、10杯取れますので、一杯が、280円ということになります。これを1,000円で売れば、原価率28%です。

実際に、すべての扱い品目をこの方法で売値を決めていたわけじゃないです。原価率23%の酒もあれば、30%を超えてしまっても、どうしても飲んでほしい酒もあります。うまく注いで一升で11杯とる酒もたくさんありました。一か月トータルで、28%で挙げてくれというわけです。一か月を通して、日本酒の売り上げが100万あったとします。日本酒の仕入れが28万で収まっていれば、クリアです。

少しでも原価率を低く抑えるように口うるさく言う経営者もいますが、あまり原価率が低いということは、それほど貴重じゃないものを高く売ってることになります。これは「客離れ」の原因です。

スマートで市場価値のわかった経営者は、27~30%くらいを与えてくると思います。




風の森・純米・山田錦

しつこいようですが・・・風の森は何度飲んでも、やはり旨いですね。

今回、京都に住む友達が奈良県に仕事で行って、買い求めて送ってくれました。山田錦の純米酒です。

愛山にしろ、この山田錦にしろ、この「純米・無濾過無割水」シリーズは、あまり磨きこまないのですね。いわゆる「低精白」というやつです。

にもかかわらず山田錦の持つキリっとしたホロホロ感を十分に引き出しているのは、長期低温発酵によるところが大きいです。

酵母が付着した米をゆっくり時間をかけ、酵母が活動しやすい温度を維持したまま、発酵させるのですね。

そうしてできたモロミを袋吊りという凝った製法で吊るして搾り、できた酒には、割水も濾過もしない。そうして瓶に詰められた酒は生きた酵母の働きで、シュワシュワ感があります。

知識のない人が闇雲に抜栓すると、ワッと吹き出すことさえあるほどです。

冷蔵庫でしっかり冷えた状態で静かに開ければ大丈夫ですが。

東京Xという豚肉と、野菜をセイロで蒸して、ゴマダレで食す・・とともに飲みました。

山田錦由来の甘酸っぱいフルーティーさと、豚肉のさっぱりとした味わい、とても合いますね。




「常きげん」の旨口酒をスタミナ肉料理とともに・・・

「じょうきげん」と発音するお酒が2種類あります。

一つは「上喜元」と書く山形県のお酒。

そしてもう一つが「常きげん」と書く石川県のお酒。

先日、この「常きげん」を地元の居酒屋でいただきました。本醸造旨口系です。

「ヒデちゃんにしては珍しいチョイスだね」

なんて、一緒に行った ジム仲間=飲み友達 は言います。俺はどうやら、ある程度磨きこんである純米吟醸系ばかりを好むと思われてるようです。

確かにそういう「磨いてある酒」が好きなのですが、合わせる料理によっては、本醸造辛口ガラガラ系酒もいただきます。

が、このお酒、大雑把な辛口でもなく、ガラガラとノドに絡みつくような感覚でもなく、なんて表現すればいいかな・・・「味の濃さ」を感じるんです。

磨いてある酒がピュアなのに対して、この旨口酒は、どっしりとしたアルコール重量感があります。スタミナがつく肉料理とともに日本酒をやるには、いい酒だと思いました。

先日、血腫を除去する手術を受け、カラダからその分の血がなくなったから、それを回復するように、ホルモン炒めを食べたのですが、そうした「ガッツリ系」の料理に、とても合う酒だと思いました。

石川県と言えば、「吟醸王国」と評されるほど、「磨いてる」県なのですが、こういう本醸造酒にも能登流の「きめ細かい」技が生きているんだなぁ、と実感しました。

すき焼きやつくね鍋にも、こうした「旨口の押しの強い酒」って、いいと思います。




寿司屋で「〆張鶴」を一献

山田錦を50磨いた純米吟醸が出ているにも関わらず、〆張鶴というと、この五百万石の50磨きの「純」がポピュラーですね。

無難という感じが、皆に定着しているのでしょうか?

久々に寿司を食べに行き、寿司とともに日本酒を味わいました。

「酒を楽しむためにアテがある」という、いつもと違って、「寿司という料理を味わうために、酒を飲む」という感覚には、とても合う酒ですね。

新潟酒特有の「淡麗系」は、鮮度のいい生ものを「きりり」と食べさせるのにはいいと思います。蔵元のある新潟県村上市は良質な五百万石の産地ですから、伝統的な酒造好適米と、寒冷地で重用される10号酵母の醸し出す酒は、「ツン」としたアッサリ感になります。

刺身だけなら、大吟醸がいいのですが、シャリもついて、「寿司」になると、こうした「淡麗系」の酒、アリだと思います。





鍋島・特別本醸造

子分と馴染みの和食屋さんに飲みに行きました。

そこで鍋島の特別本醸造をいただきました。とても甘口の酒ですね。

おそらく日本酒度の数値がマイナスを示すと思います。

ただ、砂糖を煮詰めて飴菓子を作るようにベタベタしているわけでは、けっして無く、サラっとした喉越しなのです。

その甘みも、菓子のようではなく、果物のような吟醸香を纏っているのです。

「ええ~これ、本醸造なの?」

と驚嘆する友達に俺も同調して

「ホント、ラベル見ないで飲んだらわからないよね」

と言いました。実にすごい醸造技術です。

やや濃いめに味付けした揚げ出し豆腐と、とてもよくマッチして、鍋島蔵元の酒造技術の高さと、提供してくれた和食屋さんの、料理との相性を考える姿勢に美味しく酔った宵でした。




くどき上手~純米大吟醸・鑑評会出品用

東北地方の日本酒の製造技術や品質の向上を目的に毎年開催され、仙台国税局で最終審査が行われる東北清酒鑑評会・・・その鑑評会出品用に、山形県の人気銘柄「くどき上手」が粋意を尽くして造った純米大吟醸を馴染みの日本酒バルでいただきました。

しかも合わせるアテは身の締まったヒラメの刺身です。



昭和60年に、それまでの「亀の井」から「くどき上手」に改称し、浮世絵の美人画をデザインしたラベルは有名ですね。小川酵母(10号酵母)で醸すことによる、たおやかな味と香りは、数多くの吟醸ファンを魅了しています。

使用する酒米も「亀の尾」「出羽燦燦」「羽州誉」etc・・・など幅広いのですが、鑑評会出品用となると、やはり山田錦ですね。しかも35という絶妙な磨き加減です。

熟した柿のような控えめな甘みと、けして控えめじゃないフルーティーな押し、いやいやなんともいいですね。

ヒラメの味わいと合い過ぎで、仕事の疲れを払拭してくれました。




越後鶴亀~缶入り純米酒の手軽さ

日本酒で手軽に喉を潤すには、缶入りの純米酒、いいですね。

冷却効果が高く、光を通さないアルミ缶に入った酒は、ビールのように飲めます。

 この越後鶴亀という酒、山田錦を使った本格的な大吟醸を作っているこだわりの蔵なのです。その姿勢は仕込み総量の少なさからも、分かります。

俺の記憶が正しければ、何年か前に、フランス料理(中国料理だったかもしれない)と合わせると美味しい日本酒として賞を取ったと思います。

 その蔵から出ている缶入り純米酒です。缶ごと冷やして、冷蔵庫から取り出して、「プシュー」とやれる手軽さがいいですね。

淡麗で、やや辛めな味わいはドライな感覚がします。

アテとして、サバの塩焼き、ソーセージのチーズ焼きを作りました。

忙しい時に日本酒をちょこっと味わいたいのに適していますね。




五郎八 2020

五郎八・・・やはり美味しいですね。

本格的な寒さを迎える前に飲んでおきたい「初冬の風物詩」です。風邪対策の予防薬という印象を、俺は持っています。

濾してないモロミがそのまま瓶に入り、独特の酸味をもたらします。

アルコール度数が高い故、ガツンときてしたたかに酔う感覚がいいですね。

家事をこなし、仕事関係の勉強をして、宅ジムで鍛える・・・「爽快感のある疲れ」(そんな疲れ・矛盾してますかね)に包まれた時、その疲れを一掃してくれる酔い心地です。

会社の同僚は、五郎八と中華料理を合わせるのが好きだといいます。確かにこの酒の「強さ」は味の濃い中華料理と合わせたら、「いい汗がかける」ことでしょう。

俺もそうしてみようかとも思ったのですが、なんとなく、この酒の持つ「強い口当たり」をダイレクトに感じたかったので、優しい味付けの「ほうれん草の胡麻和え」を作ってアテにしました。

酒の持つ強さが疲れを取り除いてくれました。いい酒です。




宝剣・かすみ酒を蛤とともに・・・

宝剣と言えば、日本酒好きな人のほとんどが、その卓越した「仕込み水」にあると応えます。蔵元の敷地内に湧き出る伏流水が広島県内でも稀有な名水として知られ、「宝剣名水」と名付けられたほどです。

この酒は、出始めた頃から好きで、折に触れ、味わっております。

この酒を醸す 土井鉄也氏は、本当に「熱い人」で、旨い酒を造るために生きているような方です。

俺も会ったことがありますが、まるで、スープや麺に細心のこだわりを持って、「究極の一杯」をつきつめる「ラーメン職人さん」のような風貌の男くさい男です。冗談はさておき(本人が見てないだろうな・汗)、20代の若さで全国利き酒選手権にて全国優勝を果たしたことでも、その「非凡な才能」がわかります。

出始めた頃から、その進化が楽しみで、広く世に受け入れられても、けして妥協することなく、旨い酒を追っている姿について回るように、いつも感動する美酒を堪能させてもらっています。

中でも好きなのが、毎年、春から初夏にかけて限定で出回る「純米吟醸 かすみ 生酒」です。

限定品で年一回の出荷であり、一部のルートにしか流れないのですが、今年も「裏から手を回し」手に入れることができました。

広島酒で重用される酒米・八反錦を55磨き、オリを絡めて、薄っすらと霞かかったように仕上げた生酒です。

友達からハマグリをおすそ分けされたので、合わせてみることにしました。焼きハマグリにしようかと思ったのですが、酒が濃醇な含みを湛えているので、それを邪魔しないように、シンプルな味わいの酒蒸しにしました。プラスアルファは、胡瓜とセロリをモロミ味噌で食べる、それと、ごま豆腐です。

絞ったばかりのフレッシュな味わい、絡んでいるオリが出す酸味、八反錦ならではの、角の無い穏かな丸さ・・・いやいや、びっくりするほど美味しいですね。

「飲めてよかった」という余韻を与えてくれる一献です。感動しました。

「呉のドイテツ」と謳われるだけのことはあるね、さすが!




雨後の月~「涼風」純米吟醸

俺的には、いい酒は当然、冷蔵庫で保管して、冷えたまま味わうものですが、そうした中にも「適温」という飲むにあたっての最適な温度があります。

初夏になると出て来る夏向きのお酒・・・アルコール度数を抑えて、軽快にのどを潤す感覚で飲める造り・・・「夏吟醸」なんて言い方をしますね。

ビールやシャンパンのように冷蔵庫でキンキンに冷やして味わうのが「適温」だと、俺は思います。



「雨後の月」と言えば、酒徒を魅了し続ける広島屈指の銘酒蔵で、軟水を好んで用いる広島醸造界を牽引する造り手です。

その蔵の「夏吟醸」です。山田錦を55磨き、暑い時期に出す酒なので加熱してあります。フレッシュな果実を思わせる香りが、敢えて軟水で仕込むことにより、やや甘めに優しく押してきます。

アルコール度数が抑えてある分、喉を通過する時の感覚も軽いです。

暑い中、頑張って仕事を終え、家に帰って、こんな酒が冷蔵庫でキリリと冷えていたら、「あーあ、暑さも吹き飛ぶなぁ」となります。

地元の魚屋さんに行き、美味しそうな中トロがあったので、柵で買い自分で引いて刺身にしました。

もう一品は、やはり夏の一献をやる上で、野菜の旨みと合わせたくて、「お浸し」です。今回は豆苗のお浸しをアテにしました。

軽快な飲み口と、アテがマッチして、クックと杯をあおってしまいました。

昼間、暑い中、宅ジムしたり、掃除したりと頑張ったので、本当に美味しかったです。




雨後の月~Black Moon

相原酒造店から年2回出荷される限定品「Black Moon」・・・俺は以前から好きで、自分の働く店でも、出ると扱っていましたが、今や人気が高まってしまい、争奪戦が激しくなっております。

山田錦と双璧をなす酒米の一方の雄・雄町を使って醸します。

山田錦に特Aランクがあるように、雄町における最高峰は「赤磐雄町」といい、岡山県赤磐地区で収穫される雄町がいい酒を造る上で、必須の酒米です。

その赤磐雄町を50磨いた純米大吟醸の新酒です。しかも火入れしていない生です。

初夏に出る火入れの「Black Moon」も確かに美味しいのですが、搾ったばかりの新酒を生で味わうことの方が、俺は好きです。

 雄町に備わる独特な酸味が、新酒ならではのみずみずしさで押してきます。愛知の九平次のように、雄町の使い方に優れている蔵ですね。

こういうすごい酒にはやはりいい刺身です。というわけで、地元で全幅の信用を置いている魚屋さんでカンパチを買い、刺身にしました。自作の肉じゃがと、浅漬けの素で漬けた小茄子です。

酒の持つ、甘みと酸味が混然とした口当たりやのど越しを邪魔しないように、カンパチは腹側と比べ、味が淡白で、脂もやや少ない背側を用意してもらいました。

赤磐雄町が出す甘みと酸味が、淡白な鮮魚の味わいにマッチして、美味しく酔えました。




雨後の月~無濾過生原酒・純米大吟醸

冬真っ盛りに出るBlackMoonと特A山田錦の純米大吟醸・・・どちらも格としては遜色ないのですが、BlackMoonの方が人気は高いですね。

「雄町米サミット」が開催されるくらい雄町は近年、脚光を浴びている酒米なので、納得できます。

今回の限定出荷には、図らずも出遅れてしまい、BlackMoonは一本しかゲットできなかったので、いつもお世話になっております会社の同僚に謝意を込めて送り、俺は特A山田錦の大吟醸無濾過生原酒にしました。

BlackMoonが火入れした後、初夏にもう一度出るのに対して、こちらは厳冬期に一度の限定品です。

絞ったばかりの原酒を火入れもせず、濾過もしないで瓶に詰めた一献です。

規定の出荷量のみが無濾過生原酒として冬場に出回り、残りは火入れの通年商品として販売されます。特急列車が、ある目的地を過ぎるとそのまま普通列車になるようなものです。

アテを見繕いにいつもの魚屋さんに行くと、まさに美味しい酒を待ってたかのように、ヒラメが目に飛び込んできました。

「寒ヒラメ」という言葉があるように、冬の冷たい海で身の締まったヒラメはまさに今が旬です。酒の重厚感のある押しと、ヒラメの味は淡白で身は弾力が強い感覚、好相性です。

最近買った電気圧力鍋で鶏肉と根菜の煮物も炊きました。

特A山田錦の重厚な「ホロホロ感」を損なわないように薄味加減に味付けたのですが、「みちのく地鶏」を使うことで鶏肉から出るジューシーな旨みが沁みて、酒を幾重にも際立たせます。

やはり特A山田錦はすごいですね。こうした料理素材に備わる「持ち味」に消されることなく調和していきます。

いやいや~美味しかったです。




醸し人九平次~純米大吟醸・雄町

このお酒の概要については、もはやくだくだしい説明は不要ですね。

平成の初め頃、突如、彗星のごとく現れたかと思うと、あっという間に押しも押されぬ人気ブランドへと躍り出ました。

海外進出も果たし、フランスの有名レストランで愛飲されているほど、外国でも広く知れ渡っています。名古屋から世界へ駆け上がった銘酒です。

その九平次の純米大吟醸を名古屋の青年実業家がお中元に送ってくれました。

「山田錦と雄町、どちらがいいですか?」

と問われたので、俺は遠慮なく雄町をリクエストしました。

 九平次に関しては、俺は山田錦の持つ「ホロホロ」っとした感覚より、雄町の持つ熟した果実のような旨みと酸味のバランスのとり方が、勝っているように思えてならないのです。しかもこちらには、微弱なガス感があるように記憶しています。

ラベルに記された SAUVAGE とは「野性味」という意味ですね。

まさに酒米としての雄町が本来持っている素養を引き出した一献です。

 茹でてない生の蛸を薄く削いで刺身にしてアテにしました。

一般にスーパーとかで売られているボイルしてある赤い蛸とは、歯触りや噛んだ時に広がる旨みが違います。舌に張り付いて来るのです。

それを野性味あるガス感と果実香で押し流す・・・もう一品のアテである冷奴も、木綿豆腐の水気をよく切り、自然由来の「にがり」を多く含んだ塩でいただきます。

いやいや美味しいです。夏ならではの味わいです。

雄町の旨さに爽快に打ちのめされた感じです。「こんな酒が造れることだなぁ」と深く感動しました。

一足早い「暑気払い」になりました。

送ってくれた旧知の友に感謝する次第です。




まんさくの花~ひやおろし

かつては「日の丸」と称していた酒を、NHKの連続テレビドラマにあわせ、「まんさくの花」と改称し、特定名称酒をこの銘柄にスイッチしたのは、酒好きの間では有名な話ですね。

一度、瓶に詰めてから冷蔵貯蔵する等の貯蔵出荷管理技術において、傑出した評価がある蔵なので、ひと夏寝かせ、酒の品温と外気温が一致した頃合いを見計らって出す秋の「ひやおろし」は、雨が多かった7月、猛暑にあくせくした8月、と、気候の乱調が酷かった今年は、しっかりと品温管理に厳しさがある この蔵の一献にしました。

 買い込んで、お世話になっている人に配りまくり、自分でも味わいました。

秋田県オリジナルの酒造好適米・吟の精を60%磨きで仕上げた純米酒を、瓶貯蔵によって寝かせて、熟成させた酒です。

甘辛の度合いも +4.5と絶妙です。

その中にも、卓越した貯蔵技術によって円く熟した旨みが広がります。やはり美味しいですね。



出汁を引いて麺つゆを作り、それにつけていただく「いかそーめん」をアテにしました。

東京のブランド豚である「東京X」を、天然塩で焼いて、柚子胡椒で食べる「東京Xの焼しゃぶ」も合わせます。

更に「里芋の土佐煮」です。

「ひやおろし」の円熟さを邪魔しない控え目な味付けにしてあります。

とても相性が良く、美味しく酔って、夏の疲れが解消されました。

会社の同僚に鶴齢をいただき、「雪室」で貯蔵することにも感心しましたが、貯蔵技術って、大切です。




まんさくの花・スパークリングをイサキとともに・・・

シュワシュワ感のある、発泡性の日本酒って、その製法に2種類ありますね。

酵母を生きたまま瓶に詰めて、瓶詰め後も発酵が進み、結果として瓶の中に酵母が出す炭酸ガスがたまるパターンが1一つ。「うすにごり」と称されることが多く、冬の終わりごろ出てきます。

もう1つは、搾った原酒のアルコール度数を調節するために水を加えますよね、いわゆる割水(わりみず・かっすい)・・・これをしないで原酒のまま火入れもしないで出荷すれば「生原酒」となります。

この割水を普通のH2Oではなく、炭酸水で行い、発泡性のある日本酒に仕上げる製法があります。

この2つの製法の違い、飲めばわかります。前者の方が、フレッシュ感が強く、後者の方が、シュワシュワ感が強い、よりシャンパン的な日本酒になります。

今回、手に入れた「まんさくの花・スパークリングドルチェ」は後者の製法で造られた一献になります。酒造好適米を50磨いて純米吟醸原酒を作り、アルコール度数16°になるように炭酸水を充填したものです。

甘酸っぱい味に炭酸の気泡のはじける爽快感が加わった仕上がりは、「米で作ったシャンパン」と表現したくなる一献です。

いつもお世話になっている魚屋さんに出向くと、おおぶりなイサキがありました。いい魚ですよね、イサキ・・・和食に限らず洋食でも、ムニエルにしたり、カルパッチョにしたり、応用範囲は広いですね。

ジャパニーズシャンパンの爽快感と合わせるには、シンプルな塩焼きがいいと思い、ワタとウロコを取り、塩を強めにあてて、新しくしたオーブンレンジで焼きました。

もう一品は、やはりシャンパンみたいな日本酒を味わうにはサラダが欠かせないと思い、チェリートマトとチーズでカプレーゼ風のサラダを用意し、手作りのサザンアイランドドレッシングで食べます。このドレッシング、すりおろしたニンジンがいれてあるのが、いい食感になります。

イサキの淡白な白身、トマトとチーズの洋食的ハーモニー、それが果実香のある酒がシュワシュワ感を備えていることとマッチして、美味しかったです。




東洋美人~おりがらみ

「原点」「一歩」と続くシリーズの3作目は「醇道一途(じゅんどういちず)」だそうです。

その「おりがらみ」です。おりを絡めたことによる白濁が見て取れます。

しかも「本生・槽垂れ」ということは圧力を加える前に自重で滴った部分を火入れしないで、おりを絡め、手詰めで瓶に詰めて世に送り出した一献です。

産まれたばかりの酒ですね。

人気のある限定品なので、たくさんは入手できないのですが、数本おさえて、お世話になっている方々へ時候の贈り物にして、自分でも味わいました。

 いやいや、毎年のことながら「見事」としか言いようがありません。まるでマスカットのような芳醇な熟味が、おりの持つかすかな渋みと相乗効果をなして、旨いのなんのって、仰天ものですね。

まして生であるが故のフレッシュなフルーティーさで、グイグイ押してきます。

 ホウボウという、少し通好みの魚を刺身でアテにしました。それと、旬のブリを買って、大根と煮つけて「ブリ大根」にしました。

ホウボウは鯛やフグに並べられる味わいの、どちらかというと高級魚の部類に入りますが、酒をテイスティングした時に、冬場に美味しいホウボウと合わせたい、と、すぐに思い浮びました。

酒のしぼりたて生のフルーティーな芳醇さと、ホウボウの、淡白なんだけど、濃厚さもある味が合い過ぎて、幸せな酔いでした。




出羽桜・缶入り吟醸酒~氷水で冷やして・・・

出羽桜という美酒が山形県にあります。その吟醸の缶入りを地元の地酒専門店・三ツ矢酒店で買い求めました。

飲んだのは 2021.7.17 なのですが、その前日に東京は梅雨明けし、酷暑が始まりました。

本当に暑い日の夜に缶入りの日本酒を氷水で直接冷やして飲む・・・しかも夏に美味しい野菜とともにバケツで冷やして、冷水の中から直接取って口にする・・・酒や野菜の味わいだけじゃなく、涼感も楽しめていいですよ。

飲酒スタイルの一つの提案です。

出羽桜の缶入り吟醸酒、やや甘めの芳醇な味がして、どっしりとして喉を押す感じが刺激的ですね。缶入りで出回っている酒でも「格の高さ」を感じます。

県を挙げて酒米の開発に力を注いだり、「GI山形」といって、日本酒を管轄する国税庁により策定された山形産の日本酒を保護する地域表示制度がある、など、日本酒造りに篤い土地ならではの想いが込められていますね。




鳳凰美田・ひやおろし

冬の終わりから春先にかけて絞った新酒を敢えて出荷せず、貯蔵して寝かせることで円熟させ、外気温と酒の品温が一致したことを見計らって出す「ひやおろし」・・・毎年、夏の終わりから、秋の初めに味わって楽しんでおります。

今年は、「鳳凰美田・純米吟醸・山田錦」です。春先にできた新酒を一度、火入れしてタンクに詰めて貯蔵し、夏を越します。タンクから瓶に詰める時には火入れをしない、いわゆる「生詰め」という製法ですね。今年の8月に詰めたのがラベルから分かります。まさに21BYです。小林酒造が大切にしているプロセスであり、寝かせた熟成感を損なわずに世に送り出すことができます。

開栓時に立つ、熟した果実のような香りは、グラスに注ぎ、空気と触れさせることで、より深くなります。寝た子を起こす感覚です。そこには丁度食べ頃を迎えた「熟柿」のような芳香があります。

香りだけじゃなく、ノド空間を押して広げて来る旨みの強さがあります。

義侠の熟成酒もそうですが、山田錦を円熟させると、こうなりますね。いやいや~ビックリするほど美味しいですね。

アテとして選んだのは、ホタテの刺身です。生食用ホタテを買い、自分で引いて刺身にしました。

もう一品は、小松菜と油揚げの煮びたしです。酒の芳醇さを邪魔しないようにサバ節でダシを引き、白醬油を加えて掛け汁を拵えました。

酒の豊かな熟成度に沿うようにマッチし、幸せな酔い心地でした。




天の戸・純米大吟醸45

いつもよくしていただいている「隠れ家的和食屋さん」のご夫婦のご自宅に招かれてごちそうになりました。

肩ひじ張らない砕けた雰囲気の中で、店とは違う料理で一献いただきました。いい味に仕上がった肉じゃががデンと圧力鍋ごと出されたのがいいですね。きのこのソティー、野沢菜漬けもとても、酒と相性よかったです。

この夜、取り上げたのが「天の戸」という秋田の酒です。

「天の戸・美稲」という純米酒は日本酒ファンの間であまりにも有名ですね。森谷杜氏渾身の作です。秋の終わりに出回る「美稲の生」は好きな酒で、自分でも飲みますし、店に出ていた頃、時期にはお客様に味わってもらっておりました。

その蔵の「磨き45・純米大吟醸」です。

以前45磨きの大吟醸があったのですが、2011年、全量を純米で仕込むという大鉈を振るった結果として、リニューアルした純米大吟醸です。

秋田県の酒米「吟の精」を使い、この酒米が持つ「どっしりとしている太い喉越し」という個性を存分に引き出しています。

寒冷地ならではの小川酵母系が作り出す味わいは、やや淡麗系かな、という機微があり、それが肉じゃがの「しっかりした味付け」にとても合います。

同行したノアくんは北東北出身、酒と味付けのハーモニーに感動していました。

普段、店ではできないもてなしに、勉強会と称して呼ばれたのですが、難しいことは抜きにして、美味しく酔うとともに「いい友達ができたな」とほっこりしました。





久保田スパークリング

新潟・長岡の銘酒「久保田」・・・あまりにも有名で、日本酒に興味を持った初期の段階で誰しも一度は口にしますね。そのスパークリングです。

保存は常温でいいのですが、ぜひとも冷やして飲みたい一献です。

用事があって地元の地酒専門店に行った折、目立つ位置に冷やして売っていました。

いいですね、日本酒シャンパン・・・以前の「まんさくの花・スパークリングドルチェ」と同じで、アルコール度数調整のための割水を炭酸水でするんですね。

発泡性のある清涼感が、フレッシュです。

シャンパン感覚で洋風のアテをこしらえました。

みちのく地鶏・もも肉とブロッコリーのチーズ焼き、スモークサーモンで洋食のようにして、味わいました。

丁度、初夏のような陽気の日だったので、キリキリに冷やして飲んだのですが、そのシュワッとする感覚がとても爽やかでした。




貴・純米酒を夏野菜とともに・・・

蔵元は山口県宇部市にあります。その60磨きの特別純米酒です。

山口県産の山田錦に拘り、自ら「農業法人」を立ち上げるほど、酒米に対して篤い思いを抱いております。

水にも思いが強く、地の利を生かして、鍾乳洞から湧き出た地下水が、カルスト台地で濾過されてミネラル分を蓄え、川に流れ込む中硬水を使って仕込みます。まさに「地産地消」の、地元にこだわった一献です。



 俺は現役だったころから、この純米酒の酸味と押しのある喉越しを、夏野菜と合わせるのが好きで、働くBARでも、お客様に提案しておりました。何故か俺には「貴の純米と夏野菜」をという観念が定着しています。

地元で、西荻窪に住む以前から、かれこれ30年は付き合いのある「三ツ矢酒店」に買いに行きました。貴に関してはかなり「上の方」まで持っている酒屋さんです。

それで、調理人をなさる岡崎さんから教わった「豚と夏野菜の彩りサラダ」で貴の純米酒を味わいました。

もう一品は「ノルウェーサーモンのオーブン焼き」です。

独特の酸味と押し、硬水ならではのキリリとしたさっぱり感が、野菜の持つ旨みと相性いいですね。

夏は、大吟醸より、シンプルなアテで、爽快感のある純米酒もいいな、なんて感じた酔い心地です。




鳳凰美田・飛翔蔵~ Anniversary

酒造技術の向上や若い技術者の育成のため、今年度落成した新しい蔵・「飛翔蔵」・・・本来この蔵は実験棟や試験棟など、「試しに作ってみる」ための蔵なのですが、その開設を祝して醸造されたのが「鳳凰美田 飛翔蔵 Anniversary」です。

この一献、まるでクイズのような酒です。使用米、磨き、など、データが一切非公開なのです。

したがって、吟醸なのか、大吟醸なのか、分からないのです。

蔵元の意図するところは、新しい蔵で生まれる新たな鳳凰美田の味わいを飲み手の感性だけで、素直に感じていただきたいという気持ちを重視し、

「スペック等は一切非公開とさせていただきます」

とのことです。

アニバーサリーボトルとして、今回のみの出荷だそうで、機を逸すると手にできない代物ということです。

ん~、買えて良かった。



アテを見繕う前にテイスティングしてみて、「火入れしてあること」「醸造アルコールを使っていないこと」は分かりました。つまり「生ではない純米酒」ということになります。

包み込むような円いホロホロ感の中にキリっと1本のしっかりした酸味があるのは亀ノ尾系の好適米を50以下に磨いていると判断します。

データ非公開ながら、非常に「いい一献」です。

やはり刺身と合わせるのがいいと思い、いつもお世話になっている魚屋さんでタチウオを見つけ、買いました。

タチウオは塩焼きにするのが一般的ですが、鮮度のいいものなら、刺身にするのも乙です。

結構「難易度の高い魚」で、俺では捌けないので、女性店長の下にいる専門の包丁人にお願いしました。タチウオの刺身、淡白な白身がいいですね。

あとは、野菜の素焼きです。

好きな野菜をオーブンレンジに入れ、180℃で30分焼きました。それにチーズ味のドレッシングをかけていただきます。

中でもトマト、焼くと抜群に美味しいですね。

トマトのおでんがあるくらいだから、生でも加熱してもいい食材なのですね。



ちぎり和紙のラベル、綺麗でおめでたい柄ですね。

酒に対する自己の感性の意味合いで飲みましたが、結局のところ、いい酒を堪能できました。




亀吉・特別純米酒

長い付き合いの寿司屋の大将が青森県出身なので、飲みました…「亀吉の特別純米酒」です。

フルーティーな大吟醸ばかりを好むと思われがちな俺ですが、こういう「飾り気のない」ガンと押してくる酒、たまに飲むと新鮮ですね。

いやいや~それにしても辛いです。フルーティーの「ふ」の字もありません。

華やいだ感覚が皆無な分、どっしりとした落ち着きが際立っています。

「男らしい酒」という表現がピッタリくると思います。



刺身というよりは、魚介を加工した食品・・・塩辛とか、ニシンの麹漬けなどがいいと思います。

雪に閉ざされた北東北の気候の中、こういうどっしり感のある酒と、魚介を保存するための工夫によって食されるアテで、情感を味わうのも一興ですね。

辛い分、サラッとしています。












東洋美人・雄町

この酒には「米のバリエーションを楽しむ」という飲み方があると思います。

醸造主が大事にしている「醇道一途」という言葉・・・それに合わせて醸すシリーズは好適米を50磨き、濾過はしないで、1回だけ火入れする「生詰」の製法をとっています。

澄川杜氏が修行した「十四代」の蔵元と同じですね。



今回は酒米を「雄町」にしてみました。「ふくらみ」と、喉を通り胃に落ちて行く時に快感をもたらす独特の「酸味」を味わいたかったからです。

「東洋美人って、雄町をどんな風に仕上げるのだろう?」

という素朴な期待感も、そこにはありました。

懇意にしている酒屋さんが「6本までなら出せる」ということなので、買い込んで、自分用に1本取って、あとはお世話になっている人に秋口の贈答品にしました。

ノアくんのところの社長夫妻が「カレイの刺身と合わせたら、最高だった」というレポートを入れてくれたので「淡白な魚がいいんだな」と思い、俺は「イナダ」を柵で買い、自分で引いて刺身にしました。

「イナダ」は「ブリ」になる前の魚で、いわば「ブリの前段階」です。その分「ブリ」より脂は少なく、味は淡白です。

「雄町」の持つ「ひろがり」と「酸味」に鮮魚の淡白な味わい、すごく美味しいですね。

ここまで「雄町」の持ち味を生かすとは、さすがです。驚きました。

飲み友達が「カレイの刺身で楽しんだ」というのも、大いに納得です。

寒くなってきた時節柄、おでんも炊きましたが、やはり、魚の練り物との相性もいいです。




磯自慢・純米吟醸

高価な大吟醸・エメラルドボトルとかじゃなくても、十分すぎるくらい美味しいですね、磯自慢の純米吟醸・・・

「ホロホロ感」と言っている俺ですが、「ホロホロホロ感」を感じます。特A山田錦ならではの味わいですね。

俺が現役の日本酒ソムリエだった時分、店には絶えず切らさずおいていましたが、当時、1升4000円でしたから、今はもっとすると思われます。

「えー、これ大吟醸じゃないのかよぉ・・・」って、大手ゼネコンの酒好き役員さんが驚いたほどで、その深い味わいたるや、フルーティーという表現だけではなく、独特の「押し」があり、いつも飲むたびに「俺の事、どう思うんだ?」と問われているようで、その見事さに感服しております。

長く一緒に組んでいた板長さんが、この酒を絶賛し、「こんな美味しい酒で勝負していたんだな」と、しみじみとしていたことが思い出されます。

磯自慢の蔵元へ遊びに行った時、この特A山田錦の純米吟醸を飲むアテとして、タカベの塩焼きが供されたことを板長に話すと、

「すごい見事な取り合わせだ」と仰天し、

「タカベは、魚へんに皇室の皇の字を書くんや」

と、篤く語ってたのを覚えています。

十四代同様、個人で所有するのは難しいですね。

きちんと管理ができ、適正な価格で供してくれて、切らさずいつもある店で一献味わうのがいいですね。

というわけで、会社の帰りに馴染みの店何軒か、で疲れを癒すように飲んでおります。

この酒をきちんと扱える店は信用できます。




義侠・生原酒

義侠の生原酒・・・いつもは仕込み総量1500kg、磨き50を「義侠50の1500」と呼んで愛飲しております。

現役の時分、働く店でも「50の1500」を常においておりました。

しかし、今回「750kg仕込み」をいただきました。贈ってくれた人、何とも奮発したものです。

義侠の生原酒シリーズ、「磨き」と「仕込み総量」で表示し、価格も違ってきますね。

当然のことながら、「磨き」も「仕込み総量」も数が小さくなるほどに、酒のグレードは上になりますね。

全量、兵庫県東条地区の特A山田錦を使い、火入れも割水もしない造りには、迫真の旨さがあります。

蔵元のある中京地区の新聞紙で包んであるのも、昔からの「お約束」で、手作り感がいいですね。

搾った原酒をすぐに出荷せず、寝かせて円熟させるのも、いつも通りです。



上の「磯自慢」でも触れたのですが、特A山田錦の持ち味を上手に引き出した一献には「どうだ」と、挑みかかってくるような凄みがあります。

それを迎え撃つアテとして、「鯛の塩焼き」です。

数日前からいつもの魚屋さんに頼んでおきました。

鮮度のいい、一人前サイズの大きさの鯛の、ウロコを取り、ワタを出して、粟国島産の塩で焼きました。

義侠・特A山田錦の推してくる感覚と、鯛の白身の淡白な味わいがマッチして、もうね、美味しいのなんのって・・・見事としか言いようがない酒ですね。

鮪アボカド、白菜の漬物との相性も良くて、至福のひと時でした。




松の司・あらばしり

発酵が進んで行き、酒母がモロミとなり、清酒と酒粕に分ける時、普通はモロミの入った布袋に圧を掛けて絞りますよね。

「槽」(ふね)というシンクのような器具に布袋を積んで圧力を加え、酒を搾るのが一般的です。

ですが、圧力を架ける以前に、自重で袋から勢い良くほとばしってくる部分があり、「あらばしり」と言います。その魅力は野生味であり、布を通り越す勢いで、酒粕になる白濁を、かすかに「連れて来る」ことです。この白濁が独特の旨みを生みます。

以前は厳冬の搾りの時期に、蔵元を訪ねて「飲ませてもらう」しか、味わう方法が無かったのですが、数々の地方銘醸造蔵の存在が広く知られ、物流輸送手段の向上とともに、出回り、一般でもツテが有れば買えるようになりました。

松の司・・・正月にうってつけの酒名であり、「あらばしり」の中でもイチオシです。地元・滋賀県産山田錦を55まで磨き込んで、純米吟醸酒を仕込み、その「滴った部分」です。

買い込んで、懇意にしている人たちに「正月用の一献」として配りました。

自分でもおめでたい名前にあやかり、元日に味わいました。

数日前から頼んでおいたブリのカマの部分を塩焼きにしました。

今が旬のブリの、カマです。濃醇な酒質と淡白な味わいが合います。

サーモンのタタキも用意したのですが、これまた旨みの相乗効果でガンガン推してきます。

アテを口にとって、それを酒で流し込むように飲んだのですが、美味しかったです。

脇に添えてある「ソフトサラミ」が正月を語りますね。

2023年の「いい酒・事始め」です。

このページをごひいきいただいている酒好きなある方も、正月の一献として「松の司」にしたそうです。やはり名前で選んだと言っておりました。画像を送ってくれました。ありがとうございます。




黒龍・垂れ口

酒を搾る機材を「槽」(ふね)と言いますが、この槽から滴り落ちてくる部分、濾過されずに出てくるので、薄く白濁していますね。

「うすにごり」と表現されることが多いのですが、十四代は「槽垂れ」といいますし、黒龍は「垂れ口」と言います。



去年は、うすにごりが出る時期は「東洋美人」のうすにごりを懇意にしている酒友に配って味わったのですが、今年は変えて、この「黒龍・垂れ口」にしました。

人気があり貴重な一献ゆえ、「手に入るのは自分の分だけかな?」と思っていたのですが、いつも良くしてもらっている地酒屋さんが6本出してくれたので、日本酒上級者に配れました。

地元・福井県産の「五百万石」という好適米を55磨いた純米吟醸・生の「したたり」です。芳醇であり、果実を思わせる酒質は、さすが「垂れてきた部分」という感じです。

ビロード生地で撫でられるような、優しいタッチの口当たり・喉ごしです。かと思うと、ガス感がここちよく押してきます。

こういうみずみずしい一献には、やはり、鮮度のいい刺身です。

酒も魚もフレッシュな取り合わせで、やりたいと思い、いつもの魚屋さんに行きました。

鮮度のいいイワシがありました。5尾で550円と安かったので、そのうち2尾を刺身にしてアテにしました。

イワシはなんと言っても、よく水洗いして、キッチンペーパーで良くふき取ることですね。

捌いて刺身にしたのですが、白身魚にはない、旨みがあります。

肉豆腐も作りました。木綿豆腐の水を良く切り、松阪牛の「おとし」の部分を、地元で仲良くしている「西島ミート」で安く分けてもらい、酒のフルーツ感覚を際立たせるように、若干濃いめに味付けました。

イワシの独特な味や、肉豆腐の甘辛な加減が、みずみずしい酒質と合って、たいそう美味しかったです。



黒龍といえば、「石田屋」に「二左衛門」といった、「超高額」で、かつ、「超入手困難」なブランドがあり、「天皇陛下ご愛飲の一献」として有名ですが、俺的には、この「垂れ口」や、正月に出る生原酒の「火いら寿」あたりの、季節性のある酒で十分美味しいと思っております。




風の森・ALPHA

入社時に同じ部署で上席者だった方がいます。

とても日本酒に造詣が深く、別々の部署になってからも、なにくれとなく気にかけてくださる、とても優しい方です。

その方と、つい先日、立ち話程度ですが、「日本酒談義」をしました。

「最近、何飲んでるの?」と聞かれたので、

「紀土とか風の森とか・・・あのあたりの酒ですかね」と答えました。

「確かにあの辺は、いい蔵元多いね」と、和歌山線沿いに銘醸造蔵が点在していることを知っていました。

中でも俺と同じで、「風の森はすごい」と言います。蔵元である㈱油長酒造はバイオマスに特化した自然由来の農法や醸造法で酒を醸していると言うのです。

そのことは俺も知っていましたが、そうした、バイオマスを生かした技法に、うちの会社が一役買っていることを教えてくれました。さすが会社の上層部にいる酒徒さんです。

風の森と弊社が関りがあること、あの見事な酒造りに、俺を拾ってくれた会社が、協力できていることが、とても嬉しいです。

風の森が飲みたくなり、「風の森といえば、東京ではココ」という酒屋さんに頼んで、ALPHAシリーズを用意してもらいました。

このシリーズは酒母の作りに特徴を持たせた酛で仕込みます。こうすることでフレッシュな果実のような清涼感のなかに、それを際立たせる渋みが生まれます。

微発泡でガス感があるのは同じです。

いつもの魚屋さんで鮮度のいいヤリイカを見つけました。

刺身でもいいのですが、酒との相性で、ボイルして生姜醤油で食べる、をアテにしました。「ヤリイカの釜上げです。

鱈のホイル焼き、ローストビーフのおとしともども、マッチして疲れがとれる癒しの酔い心地でした。やっぱり風の森はすごい。




紀土

↑の話と付随します。

会社の上席者と日本酒談義をして、「あの辺は、いい蔵元が点在している」と、紀ノ川、有田川沿いの銘醸造蔵に賛同したから、ということもあって、「紀土」が飲みたくなりました。

「紀土」なら、かなり上の方まで揃う地元の三ツ矢酒店に行くと、限定品の夏酒「夏の疾風」が入荷したところで、迷わずすぐに飛びつきました。

最近愛飲している紀土の、清涼感を追った「夏バージョン」の一献です。

酒米に五百万石を使用し、それを50磨き、低アルコールに仕上げています。それでも15°あり、クック飲むと、酔う度数です。

開栓時に、爽やかな吟醸香が立ち込めます。それでいて、さっぱり感を出すため、糖度を抑えて粘着感を削ぎ、きりっとしたやや辛めにしてあります。

リンゴを彷彿させる酸味も夏の酒ならではです。

いつもの魚屋さんに行くと、今朝上がったばかりの生しらすが江ノ島から届いたということなので、買って生姜と醤油で頂きました。良いアテです。

オクラをゆがいて八方白だしで食す、それと生ハムとチーズです。

とても美味しかったです。

会社の上席者との、ささやかな立ち話から始まった「goodな夏酒の出会い」です。




尾瀬の雪どけ・「夏吟」を居酒屋メニューとともに・・・

毎年、初夏から盛夏にかけて、各蔵から出回るあっさり系の酒・・・「夏吟」とか、「夏吟醸」といいますね。

概して糖度やアルコール度数が低くて、サラッと飲めますね。

「ひやおろし」が出る前段階に「お中元代わり」に酒友に配っています。

今年は「尾瀬の雪どけ・夏吟」にしました。

蔵内にある自社井戸から汲むやわらかな極軟水を仕込水に、手造りで酒を造ります。

蔵元である「龍神酒造」は、数種の酒を醸していますが、そのメインブランドでもある「尾瀬の雪どけ」は、ほとんどが純米大吟醸酒で、人気が出てしまい、俺が好きな「オゼユキ・愛山」は、品薄状態ですね。

(もっとも出回るのは、3~4月頃)

山田錦を用い、自社精米で丁寧に精米し造り上げる酒は、夏向けの酒でありながら、フルーティーで膨らみがあり、「さすが山田錦使用の純米大吟醸」と、大きく頷けます。

夏酒ならではの軽快な瑞々しさと、それでいて駆け抜ける吟醸香を併せ持つ見事な一献です。

友達は鮎の塩焼きで味わったと言っておりましたが、俺は、「居酒屋風」メニューと合わせて飲みました。

タコブツ、じゃがバター、そして仙台に仕事で行ったノアくんのお土産「牛タンのスモーク」です。

最近、日本酒と肉料理を合わせるのが好きな俺です。

会社の同僚は、この「オゼユキとローストビーフを合わせた」と言っておりましたが、脂っぽくない調理方法や、肉質なら、アリだと思います。

酒を配った友達から、合わせたアテを聞くのって、いいものですね。

夏向きの果実のような酒質と、居酒屋メニュー、合いますね。




醸し人九平次・・・ヒューマン

名古屋を拠点に活動する青年実業家・・・もうかれこれ30年の付き合いになります。

その彼が「九平次の純米大吟醸・ヒューマン」を贈ってくれました。

特A山田錦を45まで磨き、瓶の中で発酵が進み、結果として微発泡になり、開栓後、空気に触れて味わいが変わっていくエレガントな一献です。

なんとまぁ、「いい酒」を奮発してくれたものです。

箱の装丁は荘厳な感じさえします。

刻々と変わって行く味を楽しむために「ワイングラスで飲んでください」という飲み方指定も大いに頷けます。

男でもなく、女でもない・・・そんな隔たりを超えるように「ヒューマン」と名付ける辺りに、センスの良さを感じます。

自身のこと、「蔵人」とか「杜氏」と名乗らずに、「醸造家」と、「デザイナー」や「パティシエ」と同等の「芸術家」と自負しているあたりに、満足することのない探求心が伺えます。

俺も会ったことありますが、久野九平次さん、ファッションモデルしていただけのことはある、長身で、往年の松田優作みたいなカッコいい方で、まさに芸術家的に「醸造家」と名乗り、何かを創造していく呼び方が相応しい方です。

特A地区の「黒田庄」というエリアに自社の田を保有し、特A山田錦を栽培し、醸造に充填していますが、この「ヒューマン」は特A山田錦の持つ「ホロホロ感」を優しくみずみずしいかすかな酸味がそっと包んでいるのです。

酒質と言い、味わいといい、エレガントとしか言いようがない、すごくいい酒ですね。

いくら、チキンとズッキーニの天然塩焼き、チェリートマトとチーズにオリーブオイルを掛けたカプレーゼ・・・ヨーロッパ、特にフランスやイタリアで愛飲されている九平次なので、俺も意識して、洋風に近いアテにしました。

箸を使わずに、フォークとスプーンだけで一献やるなんて久しぶりです。

日本酒でありながら、ワインに合うような料理と楽しめ、しかも空気に触れ、短時間で味が変化することも感得できた、まさに「文句のつけようがない」いい酒でした。

青年実業家に深く感謝申し上げます。さすが!




初亀・秋上がり

「静岡吟醸」という言い回しが使われるようになったことの一翼を担うこの「初亀」・・・秋に出る「秋上がり」は特に人気が高いです。

4本手に入ったので、懇意にしている酒友さんに、配りました。もちろん、会社の同僚にもプレゼントしました。

特A地区である東条産山田錦を55まで磨き、秋口に美味しくなるように一度火入れし、ひと夏寝かせるのですね。

そうしてできた酒質は円熟さを讃えた美しい味わいに仕上がりました。

枯れ葉を思わせるラベルの色も、デザインされた「亀」も素敵です。

静岡酵母と協会14号酵母を併せて使うことにより、すっきりとした吟醸香と喉に落ちてゆく時の「やや渋めかなぁ」と感じられる独特な「ホロホロ感」です。

焼き魚と合わせたいと思い、「秋鮭の塩焼きがいいな」なんて思い、いつもの魚屋さんに行くと、「この前、貰い物をしたから」といって「カナガシラ」という、何ともレアで通好みの魚を返礼にいただきました。

会社の同僚が「風の森」を差入れしてくださる時に、素敵な保冷バッグに入れてくれるのです。

魚屋さんに行く時、その保冷バッグをいつも使っておりますが、女性店長、「ロゴがいい風情」というので、3枚溜まっていたので、1枚上げたのです。

そのお返しに「カナガシラ」という、アテに持ってこいの魚をもらいました。「わらしべ長者」の話みたいです。

煮つけにする人が多いですが、塩焼きでも絶品です。

淡白な白身を薄塩加減で焼いて、円熟の酒と味わいました。

「まだ早いかな?」と思っていた「おでん」も醸造地に合わせて、静岡風にしました。

「黒はんぺん」さすがに合い過ぎです。

焼き魚とおでんで秋の酒を味わう…至福の時でした。




環日本海

この酒を知る人は少ないと思います。島根県の水産業が盛んな浜田市という町で細々と作られております。

俺が日本酒ソムリエとして勤めた店のオーナー夫人が浜田の海産物加工業者の社長令嬢で、その関係で、駆け出しの頃、よく飲んでおりました。

その頃は特にどうとも思わなかったのですが、久しぶりに飲んでみて、美味しくなっていることにびっくりしました。



かつて、社長令嬢に連れられて、浜田に行き、蔵元である ㈱日本海酒造 見せてもらったことがありますが、その時、蔵元でいただいた「搾りたて生」に近い味わいになっていました。

当時、店で扱っていたのは、普通に火入れした純米酒だったので、その違いを感受したわけです。

今回、環日本海の純米無濾過を東京で入手できました。懇意にしている酒屋さんが勧めてきたのです。

五百万石を65磨き、濾過しないで造った純米酒は、華やいだ香は乏しいものの、米の旨みがグイグイ押してきます。

「こんなにインパクトがある酒だったっけ・・・?」

と、久しぶりに再会した旨酒に感動しました。

押してくる旨みに負けないようなアテがいいと思い、脂分が多いブリの刺身と合わせました。

それとやや濃いめに味付けした肉じゃがです。

俺は関東の人間ですが、肉じゃがは牛肉を使います。

茹で卵を一緒に炊くと、一味も二味も、美味しいです。

どちらのアテも、どっしりとした酒質とマッチして、本当に良かったです。

いたづらにフルーティーな香を追うのではなく、米に旨みに特化することを主軸に据えた酒、いいなぁと思います。

12月には「純米・しぼりたて」がでます。仲良くしている酒友にお歳暮として配る予定でおります。




星天航路

地元で「隠れ家」的な和食屋さんを経営している岡崎さん夫妻・・・ノアくんの会社で内装工事をした関係で知り合い、当ホームページの、この「酒に関する紹介と蘊蓄」を「大変参考になる」と、ありがたがって読んでくれております。

正月の寿ぎをかねて、今年初の「旨し酒」をいただきに、行ってきました。

岡崎さんの今年初の出し物は「星天航路」という、山形県の純米大吟醸です。「栄光富士」の蔵元から年一回出る、レアな一献で、晩秋にゲットした品を、「そうだ、正月、ヒデさんに味見してもらおう」と、約3か月、自店の「氷温貯蔵庫」でしまい置いたと言います。

北海道で開発された好適米「彗星(すいせい)」を山形県の新酵母「YK009酵母」で醸した一献ですね。

使用している酒米「彗星」の名から、回り続ける星の運行旅路をイメージして名付けられたと聞きます。

山形県工業技術センターが独自に開発した新酵母「YK009酵母」は、低酸性で発酵力のある吟醸用酵母です。

その酵母由来の吟醸香と、果物のような、スッキリとした透明感にあふれた爽やかな旨味が備わっている味わいです。

山形県は、新たな酒造好適米「雪女神」を完成させており、それを用いた日本酒の商品化を念頭に置き、使用する酵母として「YK009酵母」を主軸と考えておりますが、 栄光冨士の蔵元は北海道産の彗星に特化しています。



岡崎さん特製の「松前漬け」とともに味わいましたが、スルメの甘辛さと、酒質の果実感が相まって、とてもいい感じに「ほろ酔い」できました。

いい「日本酒初め」になりました。




醸し人九平次~「彼の地」

九平次の純米大吟醸・特A山田錦を、名古屋の青年実業家に贈られて、その見事な美味しさに大きな感銘を受けて、「また味わいたいな」と思っていました。

「九平次と言えばココ」という地酒屋さんに顏を出したら、ちょうど目の行く高さの冷凍ショーケースに陳列してありました。まるで、俺を待っていてくれたかのようです。

そこで、飛びつくように買いました・・・九平次の「彼の地」(かのち)です。

青年実業家がプレゼントしてくれた前回の「ヒューマン」より1ランク上ですね。

酒屋の店主は、俺と同じく九平次愛飲家で、一緒に九平次さんに会ったこともあるのですが、「ヒューマン」と「彼の地」の遜色なさを訴え、「前回、洋風のアテでヒューマンを味わったみたいだから、今回は最新BYの彼の地でいいと思います」と勧められました。

黒田庄で栽培した特A山田錦を40まで磨き込んだ純米大吟醸ですね。JAL国際線のファーストクラスに採用されたこともあり、「時と共に飲み手を遥か彼方へお連れしたい。」という意味合いで「彼の地」と名付けたと聞きます。

前回のヒューマンが磨き45だったのに対し、今回の彼の地は40磨きなので、雑味が一層なく、果実香をしっかりと纏ったホロホロ感が喉に広がり、腹に沁み込みます。

九平次を味わう時は、洋風のアテと決めておりますが、今回もローストビーフを地元で有名な「西島ミート」さんに調整してもらいました。

「日本酒のアテにあうように、少し味薄めで、香辛料は控え目で」

という俺のカスタマイズを聞いてくれました。

それが微発泡でワインのような酒質と合わさって、すごいレベルの美味しさです。

エビとブロッコリーをゆがいてオリーブオイルと塩でいただく、それと吉祥寺の専門店で買ったカマンベールチーズです。

今回も洋風のアテにして、口広のワイングラスで楽しみましたが、空気に触れ、刻々とフルーティーさが変化していく妙技と、洋風のアテが合って、幸せな時間でした。

「彼の地」、久しぶりに飲みましたが、「相変わらず、すごい酒だなぁ」と痛感しました。




田酒・春酒

田酒の百四拾・・・140とは青森県が開発した酒米「華想ひ」のことですね。

それを50磨いた純米吟醸の生で、愛飲家からは「田酒の春酒」と呼ばれています。

ラベルが満開の桜をイメージしており、そのラベルゆえ、瓶を卓上に置いただけで、花見したような気分になれる旨酒・・・毎年桜前線の北上に合わせ、日本の南から北へ順繰りに発売になります。

たいへん美味しく、人気のある銘柄ゆえ、田酒を扱う酒屋さんでも「お一人様〇本まで」という売り方で、

俺が懇意にしている地酒専門店でも「対面のみ。お一人様1本限定」でした。

ネット販売はダメなのです。

俺は我儘言って、2本ゲットし、岡崎さんに渡しました。



華やいだ吟醸香が駆け抜け、円熟したフルーティーな旨みが広がります。

こういう一献には、やはり刺身です。

いつもの魚屋さんに行くと、マトウ鯛を勧められました。真鯛より淡白な、ちょっと高級な魚です。

でも、酒の品格と合わせると、このくらいの魚じゃないと、と思い、買って、自身で引きました。

あと最近、日本酒をやる時、肉系のアテも並べている俺、地元で有名な「西島ミート」の、ヨモギ入りソーセージです。

ハーブウィンナーを和風にしたような味わいで、その甘苦い感覚と沿います。

酒のフルーティーかつ、推してくる旨み、マトウ鯛の淡白な味わい、ソーセージの味覚・・・それが調和して、至福の酔いでした。



岡崎さん夫妻、どうでしたかね?




田酒・百田

美郷錦と秋系酒718号を掛け合わせた秋田県の酒造好適米「百田(ひゃくでん)」を、磨き45で醸した純米大吟醸です。

缶入りの「飲み切りタイプ」で、限定品であり、またしても、「おひとり様〇本まで」という売り方でした。

田酒に強い、地元の三ツ矢酒店で2本ゲットできました。

田酒ならではの旨みと、酒米由来のフルーティーさが、相待って推してきます。

缶入りという形状も「グッとやる」感じがして、いいですね。おまけに缶のデザインも綺麗で眼でも楽しめます。



ちょうど、京都に住む、長い付き合いの「智ちゃん」が「一の傳の銀ダラ西京漬け」を贈ってくれたので、味噌を払い、焼いてアテにしました。

いいですね、有名な老舗の西京焼き、上品な甘塩加減と銀ダラ由来の「程よい脂のノリ」が、酒のグイグイ推してくる「旨み」とあって、とても美味しかったです。

鯛のお造りともども、良かったです。

酒米は秋田県、田酒は青森県の酒、アテにした西京焼きの「一の傳」は、京都の店で、俺も上洛の際には、必ず立ち寄ります。

なんか、日本の「いいとこ取り」の感じがする飲みでした。




風の森・露葉風

風の森・507シリーズ・・・

敢えて「大吟醸」や「純米吟醸」といふ名称を使わずに、磨きと酵母で表現しているのが、この蔵の最近の傾向ですね。

磨き50で、7号酵母を使っているということですね。

そのシリーズは「愛山」も「山田錦」も、けっこう味わってきたので、今回は「露葉風」という、奈良県産の酒米を醸した一献にしました。

限定品で入手困難なのですが、「風の森」に強みがある、懇意にしている地酒専門店で4本ゲットできました。

実弟、ノアくんカップル、岡崎さんと配り、自分でも味わいました。

奈良県でしか作っていない酒造好適米「露葉風」は、栽培が困難な事ゆえ、一旦は途絶えてしまった品種でしたが、県内各地の農家の努力によって復活した酒米です。

心白が、山田錦よりも大きなところが特徴ですが、吸水速度が速く、原料処理が個性的なお米です。

その心白の太さゆえ、パイナップルやマンゴーのような「南方系の果実」のようなフレーバーをまとった味わいを発出します。

それが酒質のフルーティーさに伴われ、独特の味と香となって、グイッと推してきます。このシリーズ特有の微発泡性もいいですね。



いつもの魚屋さんに行くと、いいカツオが柵になって並んでおりました。

「タタキ」にしないで、生姜でいただく・・・いつも通りです。

さすが、懇意にしている魚屋の女性店長が勧めるだけのことはある「いいカツオ」で、上質な身の旨みが、酒の甘酸のバランスとマッチして、とても美味しかったです。

蒸し鶏とトマト・ブロッコリーを白醬油とオリーブオイルを混ぜたドレッシングでいただく、も用意しました。

鶏肉や野菜の淡白な味わいも、酒の旨みに沿って、良かったです。

美味しい初夏の一日でした。




鳳凰美田~ひやおろし

夏の終わりから秋口にかけて出回る「ひやおろし」・・・

今年は何にしようときめあぐねていると、飲み友達の多くが「鳳凰美田、良かったなぁ」というので、何年か前に味わった「鳳凰美田のひやおろし」を、今年、再度、嗜むこととし、買えるだけ抑えて、懇意にしている皆に配りまくり、自分でも1本取りました。

兵庫県西脇市の特A山田錦を55磨き、ひと夏寝かせて円熟さを出した一献です。

「さすが、特A山田錦のひやおろしだな」

と思えるようなフルーティーな香りを纏い、それでいて、搾ったばかりの新酒はない「円い柔らかさ」が口腔から喉へと、独特な味わいとなって、推し広がるのです。

いやいや、円熟した味わいの、いい酒です。

日本酒上級者の飲み友達が「再度」を言ってくる一献です。



 さっそく、懇意にしている魚屋さんに出向き、キハダ鮪を買って、自分で引いて刺身にしました。

折しも、ほんの数日前、会社の同僚から「白石うー麺」という、油を一切使わないで延べた麵をいただきました。

白石は母方ゆかりの地で「うー麺」はよく食べていたので、懐かしい限りです。

鯛の切り身を焼いて載せ、自分で拵えてあった「八方白だし」を掛けて、アテにしました。「鯛うー麵」です。

共に酒の「円さ」と沿い、円熟した広がりを、際立たせてくれました。美味しかったです。

夏がゆきますね。




小夜衣・純米酒

小夜衣という旨し酒に出会えました。

造っている石高も少なく、地元で消費されてしまうことが多く、東京までまわってこないのが実情で、「出会えたら必ず飲め」が酒徒の合言葉ですね。

俺も現役時代、たまに、ですが、提供できていて、その見事な造りには、注目しておりました。



 行きつけの地酒バーのマスターから、小夜衣が入荷したと、LINEをもらい、会社の帰りに寄った次第です。

地元・静岡県の米である誉富士を使ったシリーズの純米酒です。

ラベルをみせてもらったのですが、磨きは60でした。

すっきりとしていて、やや甘味かなぁと、感じました。

酸味は薄く、軽快な口当たりです。

それでいて、酸のキリッっと感もあり、思わず、「ナイスバランス!」と叫びたくなるような一献でした。

出始めた牡蠣の、その煮付けとともに味わいましたが、牡蠣のプリっとした磯風味が甘辛に炊いてあり、酒の甘酸の味わいと沿い、美味しかったです。



読んでくれている酒好きな同好、小夜衣と魚介系のアテ、小夜衣があったら、トライしてみてくださいね。





黒龍~九頭龍「氷やし酒」

黒龍の「氷やし酒」・・・その名の通り、燗などせずに、冷やして味わうのが主眼の一献です。

夏にでまわることが多いのですが、「頂いたのを忘れていた」感じで、冷蔵庫のすみから出てきました。

俺には、酒を温めて飲む習慣がなく、冬でも冷え冷えの日本酒を嗜んでいるので、そうした意味では「関係ない」のですが、夏向きの酒を、敢えて自分ん家で寝かせて秋口に味わうのもいいのではないかと思い、11月に味わいました。

「日本酒を微分する」・・・そんな感覚です。

地元・福井県産の五百石を65磨いた純米酒です。

フルーティーさは、さほどないものの、バランスのいい「推し」が来ます。

冷蔵庫で寝ている間、少しだけ熟したのでしょう、やや甘めな清涼感が立ち込めます。

こうした飲み方、アリだと思います。

懇意にしている飲食店経営者からヒラメをもらいました。しかも常磐モノです。

柵取りして、分けてくれたので、自宅で引いて刺身にしてアテにしました。

「どんこ椎茸の素焼」も用意しました。

ヒラメのコリコリ感、淡白な味わい、どんこ椎茸の肉厚なジューシーさ、それらが、自分で熟成させた酒と合い過ぎです。美味しかったです。

「氷やし酒を盛夏ではなく、晩秋に味わう」・・また一興ですよ。




伯楽星 ・・・ 備前雄町

宮城県に「伯楽星」という美酒があり、愛飲しています。

明治6年より酒を造り続け、その見事さは、日本のみならず、例えば、フランス料理の食中酒としても評価が高く、海外でも人気があるほどです。

東日本大震災で転居を余儀なくされましたが、同じ町内で移転したものの、そこは、近くに美しい水源がある恵まれた土地だったのです。「禍を転じて福と為す」という諺があるように、良質の仕込み水を得た伯楽星は、より一層美味しくなりました。

宮城県内の蔵元が7軒集まって、毎年一度醸す「DATE7」でも、中心的な役割を果たし、東日本大震災の折、造りを引き受けてくれた能登の蔵元が、大きな災害で被災した時には、今度は、その蔵の造りに手を貸しました。

日本酒を造ることに、とても「篤い」蔵元です。

今回、その伯楽星の「純米吟醸・雄町」を入手できました。

山田錦に特A地区があるように、雄町米も岡山県備前地区産地の雄町が、通称「備前雄町」と称され、いい酒を醸す上での必須な酒米です。

限定品で、あまり出回らないのですが、懇意にしている日本料理屋さんのツテでゲットできました。

備前雄町を50磨いた純米吟醸酒です。

やや辛く、雄町特有の酸味がいいアクセントとして、存在します。

特A山田錦ほどのフルーティーさはないものの、さすが雄町の王者、見事な旨味とバランスです。

ビンチョウマグロ、タコとブロッコリーのオリーブオイル焼き、それと飲んだ日が冬至だったので、カボチャを焚きました。

どれも酒質のバランスに沿い、美味しかったです。

特にタコの旨味と、酒の酸味が合い、口福でした。タコって、日本酒をやる時、優れたアテになりますね。

カボチャもポクポクに焚けて、甘みが酒質の酸味と絶妙で、美味しかったです。





↑ 行きつけの和食屋さんは、伯楽星の幟を店頭に出すほど、この酒に入れ込んでいます。




実力のある蔵元と、いい酒米の出会い

名のある料理人が、最高ランクの和牛を使ってステーキを焼く・・・当然おいしいですよね。

日本酒もそうだと思います。実力のある銘醸造蔵が、酒造りに最高に適した酒米で酒を醸す。そこには言葉では表せないような感動があります。

「こんな酒があるんだ・・・」

心の琴線に触れる感じです。

佐賀の「鍋島」が兵庫県特A地区の最高峰の山田錦を使って造った大吟醸。

さらには・・・出始めた頃から俺は愛飲していて、今をときめくまでに育った、奈良の「風の森」~秋津穂や山田錦といった酒米を使うことが多いですが、この「風の森」が愛山を使って純米酒を醸す。

酒造技術の研究に余念がない蔵と、最高の酒米の出会い、いい酒ができないはずはないです。





休肝日・オムライス

昼ご飯は社員食堂で食べています。

よく出るメニューにオムライスがあります。が、あまりおいしくないのです。

社員がワッと集中するからスピーディーに裁かないとならないのはわかりますが、皿に盛ってあるチキンライスに、まるで卵スープをかけたような一品です。フワトロを意識しているのでしょうが、「なんかなぁ・・・」という気分になり、そういう時は、オムライスをパスして、パスタなどを食べてます。

玉子がふわふわのものや、デミグラスソースの中に浸かっているようなもの、最近はよく見かけますね。でも、やはりオムライスは、卵をしっかり焼いた、懐かしい頃のものが断然おいしいですよね。

綺麗に作るためには、なんといってもフライパンのコンディションです。油の膜がきちんと引かれた状態で手入れされているフライパンは、卵を流し込んでから、浮いてはがれるように焼け、チキンライスをリリースした時に自然と動き、簡単に丸まります。

肝臓を休める日には、こんな夕ご飯、どうですか?