山陰の郷愁
2018.3.2~4.
神話、怪談、妖怪に材を取った漫画・・・
誰しも一度は不思議に感じ 時にはかすかな恐怖を覚えたはず
大人になって 分かったような口を利いても
旅の郷愁のなかで 懐かしい時空に還る時
そうした説話が心をくすぐる
どことなくうら寂しい海の風景に身を置くと なおのこと・・・
米子
出雲市駅から乗った山陰本線は、さっき駆け足で観光した松江を通り越し、米子駅に着きました。17:30です。今回旅に誘ってくれたロングさんが駅に迎えに来てくれていました。暮れてゆく陽の光を受けて、駅頭のオブジェが輝きます。ロングさんが運転する超デラックスな車で走ります。車の豪華さが「成功している人」ということを語ります。今日の俺のホテルを目指します。車の中で言いました。
「はじめまして、鳥取県」
温泉ホテル
ロングさんが運転する車に15分くらい乗ったでしょうか・・・皆生温泉のホテルに着きました。ホテルのすぐ裏手は日本海です。海べりに立つホテルです。「車を置いて1時間後に迎えに上がります。ゆっくり温泉に浸かってください」そう言ってロングさんはホテルから歩いてもすぐという自宅へ一旦引き上げて行きました。俺はチェックインを済ませ、部屋に案内されるとすぐに大浴場につかり、汗を流しました。なんたって昨晩は夜汽車の中だったので、こうして手足を伸ばして温泉につかれるのが、何よりの回復です。3月の夕方6時というと、もう暗いのですが、大浴場の眼下は悠々とした海です。遠く船灯りが風呂から見えました。(浴場で写真は撮れないので、画像はありません) ホテルの調度品や「渚のラウンジ」というくつろぎスペースが素敵です。
山陰食材の会席料理
「ホテルはお風呂と寝るだけの予約にしてください」と言ってたロングさんが一席設けてくれました。山陰の「地のもの」を使った会席料理です。鮮度抜群の刺身はブリ、ヒラマサ、マグロです。鳥取和牛の鍋、鮟肝豆腐、鯛のかぶと煮、魚介と山菜の天ぷら、季節野菜とカニの酢の物・・とても凝っていて美味しかったです。ロングさんは酒もイケるクチで、差し合いながら、熱く語り合いました。「会えて本当にうれしいです」と言われ、酒を注がれた時は、はるばる山陰に来て、よかったと思いました。
朝、海岸周辺を歩く
昨晩、着いたのが日が暮れた後だったので、大浴場から、沖を行く船の灯りくらいしか見えませんでした。朝起きて、ホテルの周囲を散策してみます。本当に海にせり出した温泉地なんですね。日本におけるトライアスロン発祥の地だそうです。
靴職人~ゆかしい家庭
今回、旅へと誘ってくれたロングさんの職業・・・靴職人さんなんです。と言っても、貴乃花の倅のような靴を作る職人さんじゃなく、乗馬用の長靴を作る職人さんなんです。家庭にお邪魔し、奥さんと4人の子供さんに会いました。子供4人とは、なんとまぁ少子化対策に貢献していることですね。都会では失われてしまった古風な家に何とも言えない郷愁を感じました。「目」という漢字を縦に繋げたように、平行して走る廊下の間に、部屋や仏間があり、坪庭が配置してある。地方ならではの情感です。2Fの事務所と仕事場を見せてもらいました。1Fとは異なり、現代の作業場という感じです。熟練した技を駆使して作品を生み出す空間です。「乗馬ブーツなんて、日本でそんなに需要があるの?」と俺が聞くと、「日本だけじゃなく、海外からも注文が来る」という答えでした。ヨーロッパの、とある王室の子息から受注したこともあるそうです。下世話な俺は値段のことを聞きます。ロングさんに制作してもらうと、だいたい1足80,000円からだそうです。乗馬とは、高貴な人がするものと思っておりましたが、やはり、職人として道を極め、信頼を勝ち取ると収入もついて回るのですね。高級車に乗り、4人の子供を養育しているのも頷けます。
今回、旅の前にメールでやり取りしているときに、ロングさんが「白いスキニーを持ってきてね」と言ってた意味が分かりました。乗馬ブーツを履いて写真を撮るためだったんですね。作品をずらっと並べると「乗馬ブーツの森」と表現したくなります。ロングさんの作品を履かせてもらい、「森」をバックに記念写真を撮ってもらいました。(1足くらい、くれないかな、と内心は思っておりました・笑)
境港
暖かい家庭で、奥さんも交えてお茶とケーキで談笑しているうちに時間を気にするのを忘れてしまいました。東京に帰る前に、どうしても境港に寄りたかったので、ロングさんに車で連れて行ってもらいました。新鮮な海鮮丼を食べてから帰りたかったのですが、時間がないというより、店が丁度昼営業後の閉店時間だったのです。また来る時の楽しみにしておきます。
でも、境港は漫画家・水木しげるの出身地、有名な水木しげるロードを見学できました。「ねずみ男」のオブジェと写真に収まりました。
鬼太郎列車
米子と境港を結ぶ境線・・・鬼太郎列車が走っていて、乗りました。始発と終点の米子駅と境港駅以外はすべて無人駅です。ローカルで素朴な鉄道です。各駅ごとに、鬼太郎に登場する妖怪の愛称名がついているのです。境港駅から米子空港駅まで乗車しました。境港駅でロングさんにグッバイを言う時には、ジーンとしました。このホームページを熱心に見てくれていて、俺に会ってみたいと思ってくれたことが、とても嬉しいです。改札を入る俺に一礼して、手を振ってくれました。「また是非、来てくださいね」そう言ってました。俺の乗り込んだ列車は「ねこ娘」が描かれた車両です。境港駅から米子空港駅まで、20分、境線に乗りました。
島影
17:05 発の全日空機で空路東京へ帰ります。傾いた陽を受けて海と島影が本当にきれいです。ロングさん夫妻と心置きなく語り合い、昵懇になれたこと、山陰の素朴な郷愁に触れたこと・・・とてもいい旅でした。「俺ごときのHPをきちんと見てくれている人がいるんだな」と知ることもできました。会いたいと思ってくれる人がいるうちが華・・・旅人であり続けたいと思います。