京浜工業地帯にあるミステリアスな時空間
2016.12.10
物憂いオマエの瞳に 炎の華が咲く
川崎~Blossom bloody blossom
Feel dizzy 引き寄せて 引き裂いて
優しさにだけ 犯されてるよ
さりげなさと不釣り合いな 産業道路
平行線さ
(川崎ーBlossom 宇崎竜童)
鶴見駅13時~軽く腹ごしらえ
鶴見駅に着いたのは13時少し前でした。軽く腹ごしらえしようという事になり、南口に出ると、すぐ、立ち食いソバ屋が見つかりました。昭和40年代のままのような、いい意味で「古い」ソバ屋です。壁紙が部分的にはがれている、店内が殺風景、年季の入ったおばあさんが一人でやっている~まさにタイムスリップしたような時空間です。天ぷらそばを食べたのですが、とてもいい味でした。
鶴見線に乗る
長い間、首都圏で暮らしてきて、電車の中の路線図などで、存在は知っていたけど、実際には乗ったことが無かった鶴見線・・・俺の中では、京浜工業地帯の工場とか、事業所で働く人しか乗らないのではないか、というイメージがありました。日々の通勤の中で路線図を見て、「それにしても、行き先が随分分かれているんだな」と思っていました。そうした思いは「乗ってみたい」という感情へと昇華していきました。横浜市内駅でありながら、全駅が無人駅というのがミステリアスです。長い間、気にかけていた鶴見線、初体験です。
今回、「海芝浦」という、とても不思議な駅を目指します。聞くところによると、普通の人が「降りられない駅」だそうです。またホームから見える運河の風景が素晴らしいとも聞きます。自分の日々の通勤の中で路線図を見て、「なぜ、降りられない駅なのだろう?」とか、「どんな駅なんだろう?」って、興味を持っていました。案の定、鶴見駅の鶴見線改札には「普通の人が降りられない」旨の案内が出ていました。
海芝浦駅~都会にある「秘境駅」
いやいや~着きました。念願の「海芝浦駅」です。鶴見駅からわずか11分です。ホームに降り立つと、評判通り、いや、それ以上に運河が綺麗です。寒い冬の日でも、陽光が水面を照らすのは本当に綺麗です。平日は本数もあるようですが、土日曜日は1時間に1本のダイヤだそうです。乗ってきた電車がそのまま20分後に鶴見行になるので、わずか20分の滞在でしたが、この「不思議な駅」からの絶景に茫然としました。背景に見えるのは「鶴見つばさ橋」です。
何故、「普通の人が降りられない駅」なのか、行ってみてよくわかりました。改札がそのまま東芝の事業所に直結しているのです。だからこの事業所で働く東芝の社員でないと、この駅は降りられないわけです。でも、運河の眺めを楽しめるように、東芝の計らいで、改札を出なくてもいい位置に庭園が設えてあるのです。俺が鶴見つばさ橋を背景に写真を撮ったのも、この庭園の中です。簡易suicaのような機械にタッチして、出退場をsuicaに記録して、清算します。寒いとはいえ、天気のいい土曜日、この「都会の不思議な駅」を訪れる人は俺たちの他にも、かなりいました。みんな20分の滞在の中で思い思いに写真を撮り、折り返す電車に乗り込みます。
国道駅~時間が停まった空間
海芝浦駅から、折り返しの電車に乗りました。鶴見駅まで行かず、一つ手前の「国道駅」でおります。ホームと電車の間が異常に開いており、俺のような障害の人にはかなり危険です。相方だけじゃなく、車掌さんも手伝ってくれて降りることができました。そこまでしてでも、どうしても降りたかった駅です。
この雰囲気、たまりません。昭和40年代のまま、時間が停まってしまったかのような時空間です。今のように機械に頼らず、駅の切符は人が挟みを入れていた時代を思い起こさせます。仕事なんかできなくても、生き方が不器用でも、そんな人がちゃんと生きていけた時代を俺は知っているだけに、このロケーションは感涙ものです。昼間ゆえ、店は営業していませんでしたが、日も暮れると、「ガード下」の飲み屋、いつも昭和のノリでにぎわっているそうです。情感に浸りながら、鶴見駅まで1駅歩きました。
川崎駅~お茶して、バスへ乗り込む
鶴見駅から1駅、京浜東北線に乗り、川崎に来ました。すっかりきれいな街並みに変わりましたね。町はクリスマスムード一色です。
本日の、もう一つの大切なイベント・・京浜工業地帯の工場群の夜景を船の上から見る・・・に参加します。乗船場まではバスで行くのですが、バスの集合時間までまだあるので、休憩を取る意味でカフェでお茶して、船内で食べるお菓子を買いました。カプチーノで温まったあと、集合場所である日航ホテルの脇に行くと、プラカードを持った案内人さんがいて、バスに乗り込みました。
クルーズ出航
船着き場に着いてバスを降り、船に乗り込みます。東京の隅田川を行き来する水上バスのような客船を想像していたのですが、提灯がついたコテコテの屋形船でした。夏場に乗って宴会をやる、あのテの船です。でも、風情があっていいものです。畳敷きの上に椅子とテーブルが配置されてました。右はいつも仲良く遊んでいる相方です。髪が少し伸びてます。
幻影の工場夜景~無機質な中の温かさ
船が出航しました。数々の運河を巡り、川崎港と横浜港をクルーズします。
海の上から工場の夜景を見る・・・本当に幻想的な眺めです。昼間、しかも陸側からではこの光景は見られないですから。オイル、機械音、灯光器、石油を送るパイプライン・・・そうした無機質の物質で構成された「プラント」が、まるで我々の生命活動を支えるために動く心臓のように感じます。まさに「生きた光」です。
川崎市港湾整備局で長年働いてきた男性が解説してくれるのですが、誰が聞いても知っているような、名だたる大企業の工場が続きます。昼間行った「海芝浦駅」も海上から見えました。屋形船の上に簡易なデッキが作ってあり、とても寒いのですが、上ってじっと見とれていました。写真がブレているのは寒くて震えていたためです。でも、寒さを我慢してでも、ガラス越しじゃなく、じかに見てよかったです。冷たい金属の集合体が不思議な幻想で暖かく見えます。とても感動した「工場夜景クルーズ」でした。
川崎の中心部に戻り、相方が懇意にしている酒場で食事しようと言うことになったのですが、人気のあるキャラクターが店に出る日で、とても入れる状況じゃなかったので、同じビルの鶏料理屋で、水炊きを食べてきました。 自宅から1時間の距離でも、こんな幻想的な小旅行ができて、時空を超えたようなミステリアスな体験に、ほっこり感動した休日でした。