金沢・・・伝統美に耽る旅

2017.1.6~8.

彫金、陶芸、そして今回すごく楽しみにしていた、目にも鮮やかな和菓子

一つのことに精進し、道を極め、それを伝えてゆく姿勢が日本文化を支えています

ものを包んで運ぶ、きちんと挨拶を交わす・・・その「奥ゆかしさ」 とても勉強になります



近江町市場

昨日、遅くまで飲んだことなど、ものともせず、朝早く起きて、元気に活動します。バスに乗ろうかと思ったのですが、香林坊から2停留所なので歩いて、近江町市場へ来ました。料亭のプロの料理人さんたちが目利きして、仕入れしています。ずらっと並んだ海産物は圧巻です。特に蟹が目立ちます。今の時期、ベニズワイガニと言って、とてもおいしいですね。昨日、木倉町で、店主がサービスで出してくれました。今日、市場で見て、「結構値が張るんだなぁ」と思いました。暦に合わせて「七草粥」の炊き出しをやっていました。

ひがし茶屋街

近江町市場から、金沢周遊バスに乗り、浅野川大橋のたもとで降り、やってきました。念願の「ひがし茶屋街」です。凛とした佇まいは、まさに Japan beauty です。金沢をPRするための女性が和服姿で和傘をさして立っています。とてもあでやかです。

情感に気押されて、震えるような感動を覚えつつ、隈なく散策してみます。旅に出るといつも感じることですが、「ここまで来れたんだ」という気持ちです。

金沢と言えば、金箔ですよね・・・金をどこまでも薄く延してゆく職人技を感じる店がありました。金箔で包んだ焼き菓子が目を引きます。金箔をあしらった漆器など、とても高価です。店の中から見る「坪庭」が素敵です。

11時の開店を待って、朝ご飯をします。時間的にブランチという感じですね。「ひがし茶屋街でブランチを」なんて、いい響きです。石川県各地の米を土鍋で炊いたご飯がウリの「金沢のおばんざい」定食をいただきました。この日は能登の輪島の棚田で採れた米で「もっちりした食感が特徴」と説明されました。サバの塩焼き、ふろふき大根、自家製マカロニサラダ・・・とても美味しかったです。デザートは「中島菜」という能登野菜を使った豆乳プリンです。

大樋美術館

ひがし茶屋街から浅野川大橋を渡って、少し歩いたところにある、大樋長左衛門のギャラリーです。和菓子とか、陶器が発達したのも、歴代の藩主が「茶の湯」の造詣があったからで、加賀藩5代藩主・前田綱紀の手厚い保護を受け、九谷焼にはない、「飴色釉」という特徴を持ち、こんにちに至るまで歴々と造り続けられている「加賀の名碗」です。やはり高価ですね。技を極めた人はすごいです。

森八本店~加賀の和菓子のすごさを知る

京都に旅行した時に「どうしても寄りたい」と楽しみにしていた「西京漬け・一の傳」さんと同様、今回の金沢旅行で、「どうしても」と楽しみにしていたのが、ここ「加賀藩御用達の菓子司・森八本店」です。日本3大銘菓に数えられる「長生殿」は歴代の藩主に愛され、伝統に支えられて、こんにちなお、変わらぬ美味を守り抜いてます。和三盆を使い、口に入れるとハラハラと溶けてゆく感じで、上品な甘さが広がります。今回は、この「長生殿」を、弟をはじめ東京の友達のお土産にして送ってもらいました。

代々、森八に伝わる和菓子の「木型」を見せてもらうことができました。祝い事と言っても、結婚、誕生、長寿など、あらゆる場面に応じて使い分ける木型が何種類もあり、奥の深さを感じます。生地を型に押し込めて、ハッと抜く技も見ることができました。すごいです。本当は写真に収めたかったのですが,お願いするのをためらってしまうほどの職人技でした。いいものを見せてもらいました。2階の茶寮で「紅梅」という銘の菓子と抹茶を喫しました。

やはり、寿司も食べたい!

ひがし茶屋街でおばんざい定食を食べて、さほど時間も経過してないのですが、やはり金沢で寿司を食べないテはないと思い、検索すると、金沢駅ビルの飲食街のすし屋がヒットしました。早速、周遊バスで向かいます。行列ができてて少し待ったのですが、30分ほどで通されました。昼だというのにビールを飲んでしまいました。やはり、金沢は「寿司処」ですね。脂が乗った寒ブリ、甘海老などなど、美味しかったですl

主計町

「かずえまち」と読みます。寿司を食べ終えて、再度、浅野川エリアに戻ってきました。ひがし茶屋街とは川を隔てて反対側になります。川に沿って静かにたたずむ茶屋街です。

尾山神社

主計町からホテルへ戻る途中に通ります。加賀藩祖・前田利家と妻女のまつを祭る神社です。数年前、NHKでやっていた「利家とまつ」の世界です。正面階段に手摺が無くて「どうしたものかなぁ」と思ったのですが、難なく上がれました。和、漢、蘭の様式を取り入れた五色のギヤマンで飾られた神門が傾き始めた陽光を受けてきれいでした。思わぬところで初詣ができました。

加賀料理

ホテルへ戻り、風呂に入って支度して、念願の加賀料理をいただきに、再度、浅野川大橋に向かいます。香林坊からバスに乗ります。知り合いが「安心して任せられる店で、料理は最高に美味しい」と紹介してくれた「魚常」さんです。浅野川の川べりにあります。気さくな、それでいて芯のしっかりした女将さん、その息子さんご夫婦が切り盛りしている、加賀料理の店です。正面には鏡餅が飾られています。よく見ると、鏡餅の上の方の一枚が赤いのです。加賀でも、金沢だけの伝統だそうです。

いやいや~本当にすごいです。食べる前に、綺麗さに心奪われます。「和食は目食」、つまり目で楽しむことも大切と言いますが、素晴らしいです。造りは寒ブリ、甘海老、鯛の昆布〆・・・そして加賀料理の大定番の治部煮、ワサビがいいアクセントになります。「梅麩」「すだれ麩」を使うのも「麩」を重んじる加賀料理のスタンダードですね。

焼き物は念願の「のどくろ」です。11月をやめて1月にした方がいいと言ってくれた人は、ひょっとして、この魚が出る時期を意識してアドバイスしてくれたのではないでしょうか・・・のどくろと一緒に加賀の銘酒「五凛」の大吟醸をいただきました。近江町市場で見て「すごいなぁ」と思ってた「ベニズワイガニ」もきちんとコースに入っていました。

白子の天ぷらには、加賀蓮根が添えてあり、揚げ出し仕立てになっています。締めの食事は暦を意識した「七草粥」でした。大満足、大感動の加賀料理のコースです。

格式のある割烹のようでも、女将さんも、息子である店長さんも、とても気さくな、温かい人でした。特に女将さんの人柄には感動しました。俺の気分を害さないように、障害のことを気遣います。俺は笑って「何でも聞いてください」といい、この病気の人は家にこもりがちになってること、俺はそうじゃなくリハビリを兼ねて、あちこち旅をするのが生きがいで、今回北陸に来た事、一日家にいて行政を当てにする生活をする気などサラサラないことを呂律が回らない口調で説明すると、目に涙を浮かべて、「アンタはしっかり考えてるなぁ」と褒めてくれました。会計を済ませ、店を出る時、美味しかったことに感動した感謝を言うと「またぜひ、金沢においでな」と言ってくれました。玄関を出て、いつまでも手を振ってくれていました。人間って哀しくて優しいね。